労務

海外で出産する場合の産休・育休の手当・給付金は国内出産と同じ?異なる点は?

近年ではリモート勤務も一般的なものになり、国内企業に在籍しつつ海外で生活する人も存在します。

今回は、海外在住の従業員が海外で出産した場合の産前産後休業・育児休業中の給付金や保険料免除制度について解説します。

国内での出産の場合との違いは?

給付内容は基本的には国内での出産の場合と同じ

休業中の給付や保険料の免除については、社会保険・雇用保険に加入していれば国内で出産する場合と同様です。

タイミング給付金・免除
出産時・出産一時金
産前産後休業中・出産手当金の支給・社会保険料の免除
育児休業中・育児休業給付金の支給・社会保険料の免除

給付については一点だけ、出産一時金については海外の病院は日本の「産科医療補償制度」に未加入のため支給額が48.8万円になります。

(産科医療補償制度に加入している国内の病院での出産であれば50万円)

振込口座は国内の口座のみ

すべての手当・給付金において海外送金はできないため国内の口座が必要となります。

また国内での出産の場合と同様に旧姓名義の口座への振り込みもできません。

異なるのは添付書類が多くなる・手続きに時間がかかる点

いちばん異なる点は、国内での出産に比べて添付書類が多くなる点です、

また海外の資料を確認したり、必要に応じて海外の病院への問い合わせが発生するため審査に時間を要するケースが多く、支給までの時間が国内出産の場合より長くなる可能性が高いです。

外国語の添付書類についてはいずれも日本語の翻訳を添付する必要があります。

以下に、それぞれの手当・給付金の支給申請時の添付書類について解説します。

出産一時金の申請について

海外での出産の場合は事後の精算になる

国内の病院で出産する場合は病院で出産一時金の手続きをし、窓口では差額のみ支払うケースが多いですが海外での出産の場合は一度全額を支払い、後日支給申請をする必要があります。

出産一時金支給申請時の添付書類

支給申請書と合わせて以下が必要です。

必要書類備考
出生を証明するための書類戸籍謄本・住民票・申請書の医師記入欄(別添可/要翻訳)・市区町村の証明(母子手帳の証明欄)・出生届受理証明書、の中からいずれか1つ
出産した日(期間)において、実際に海外に渡航していた事実が確認できる書類パスポート、査証(ビザ)、航空チケット等の写し、の中からいずれか1つ
海外出産の事実、内容について、協会けんぽが当該海外出産を担当した海外の医療機関等に照会することに関する同意書同意書様式はこちら:英語中国語韓国語ベトナム語インドネシア語

産前産後休業中の出産手当金・社会保険料の免除申請時の添付書類

出産手当金の支給申請

支給申請書と合わせて以下が必要です。

必要書類備考
現地の医師・助産師の出産証明書様式は指定無し。必要情報:出産予定日・出産日・子の人数・医師の名前・医療機関の名前(出産手当金支給申請書に医師・助産師が記載すべき内容と同様)

社会保険料の免除申請

国内での出産時と同様、添付書類は不要です。

育児休業中の出産手当金・社会保険料の免除申請時の添付書類

育児休業給付金の支給申請

支給申請書と合わせて以下が必要です。

必要書類備考
振込希望銀行の通帳のコピー氏名と口座・支店番号がわかるページ。PDFやアプリのスクショでOK(国内での出産の場合と同様)
出生を証明する書類医師がサインした出生証明とその翻訳・現地の公的な出生証明とその翻訳・出生証明受理証明書・母子手帳の写し、の中からいずれか1つ

社会保険料の免除申請

国内での出産時と同様、添付書類は不要です。

まとめ

海外での出産の場合も、社会保険・雇用保険に加入していれば上述のように国内での出産と同様の給付や免除が受けられます。

産休・育休の手続きについてはこちらの記事もご覧ください

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士