会計・税務

役員報酬は毎月いくらにすればよいか?役員報酬を決める時に注意すべきポイントについて徹底解説!

近年、時短勤務やリモートワークなど自由な働き方が認められてきており、本業だけでなく、副業をしているサラリーマンが増えてきています。

その流れから、本業を退職し、副業で実施している事業をメインに会社を立ち上げたり、個人事業主として独立している人が増えてきております。

会社を立ち上げた人は、自身の給料を役員報酬として、会社から受け取ることになりますが、いくら毎月支給すれば良いか悩む方も多いと考えられます。

今回は、役員報酬を決める時のポイントについて解説していきたいと思います。

役員報酬に関して知っておきたい税務上の内容

役員報酬とは、言い換えると「役員の給料」であり、従業員へ支払う給料とは税務上の考え方が異なります。

役員報酬を支給する上で、税務上はどういった取り扱いになるのかを理解しておく必要があります。

役員報酬決定の基本ルール

株式会社の役員とは、会社法329条にて「取締役、会計参与、監査役」を指すと規定されております。

そして、役員報酬は、雇用契約によって決定する従業員給与とは異なり、取締役決定を経て、最終的に株主総会で決議するというルールがあります。

つまり、役員報酬とは、事業の管理・執行責任を負う取締役が、数ある事業方針・事業意思決定の一つとして、取締役がその金額も含めて判断が必要になります。

そのような状況で、役員が自身の報酬を自由にいつでも変更できることとなってしまうと、利益操作が可能になってしまいます。

そこで税務上、役員報酬を変更出来るのは、原則として定款または決算月から3ヶ月以内の株主総会で変更する事になります。

期中に役員報酬を変更しても、税務上は、増減した役員報酬については経費として認められません。

役員報酬と従業員給料との違い

役員報酬と従業員給料の違いとして、上記の他、下記内容が挙げられます。

内容役員従業員
支給する為の行為委任行為勤務実績
残業代の発生無しあり
健康保険、厚生年金あり(非常勤役員は無し)あり
労働保険無しあり
最低賃金無しあり
日割り計算不可能可能

役員報酬の決定方法と決定時期について

役員報酬は上述したように、いつでも変更出来るわけではなく、原則として定款または決算月から3ヶ月以内の株主総会で決議した上で変更する事が出来ます。

実務では、定款変更を毎回行うことは不都合が多い為、役員報酬は株主総会で決定すると理解して頂いて問題ありません。

株主総会で各役員の報酬を決める事も可能ですが、まずは株主総会で役員報酬の総額を決め、取締役会で各役員の内訳を決定する事も可能です。

なお、取締役会を設置していない場合には、取締役が決定します。

基本的に、役員報酬を変更する事が出来るのは、決算月から3ヶ月以内の株主総会、または設立1期目の場合には、設立日から3ヶ月以内に決定する必要があります。

この期間内に決定しないと、役員報酬の一部を経費として計上する事が認められません。

また、税務調査の際には、役員報酬を決めた根拠資料となる株主総会議事録をチェックされる事もある為、オーナーだけの一人法人の場合であっても作成するようにしましょう。

役員報酬の経費計上方法

具体的に役員報酬が経費として認められる支払方法について、以下解説していきます。

  • 定期同額給与
    支給時期が1ヶ月以下の一定の期間ごとに、同額を支給する役員に対する給与を言います。こちらは上述したように、年に一度、支給額を変更出来、決算月から3ヶ月以内でなければ支給額を変更する事が出来ません。
  • 事前確定届出給与
    事前に指定した日付に、指定した金額を支給する給与を言い、役員に対する賞与といったイメージです。
    事前確定届給与を支給する為には、管轄税務署へ「事前確定届給与の届出書」を提出する必要があります。
    この届出書の提出期限は、「株主総会や取締役会などの決議をした日から1か月以内」又は「事業年度が開始した日から4か月以内」のいずれか早い日が提出期限になります。
    ただし、会社を設立した新規法人の場合、設立日から2か月以内が提出期限になるので、設立1期目の場合には注意が必要です。
  • 業績連動給与
    利益の状況に応じて支払われる役員報酬を言います。
    業績連動給与の支給要件は下記3つを全て満たしている必要があり、株式公開していない非上場会社は適用する事が出来ません。
    ①支給額が一定の算定指標で計算されていること②有価証券報告書に開示されていること③非同族会社であること

役員報酬の支給額を設定する為のポイント

役員報酬を支給する上で、上述した通り、一定の要件を満たしていないと経費計上する事が出来ません。

ここでは役員報酬を支給する場合、いくら支給すれば良いか、支給額を決める上でのポイントを解説したいと思います。

法人と個人の税額がいくらになるかそれぞれのバランスを考慮する

特にオーナー会社や中小企業の場合には、役員報酬の支給額を決めるにあたり、法人と役員の個人報酬が一体となることも多く、法人税と所得税のバランスを加味する方法があります。

実務においては一般的に、両者の税額がいくらになるかバランスを考慮して、役員報酬の支給額を決定する事が多いです。

役員報酬を高く設定すれば、法人税は低くなりますが、所得税は高くなります。

一方で、役員報酬を低く設定すれば、法人税は高くなりますが、所得税は低くなります。

両者を合わせた税額が最も低くなる役員報酬を支給するパターンが最も一般的な算出方法になります。

毎月の業績を予測して支給額を決定する

役員報酬の変更が出来るのは、一般的に決算月から3ヶ月以内の1度限りになります。

その為、無理に高く設定してしまうと資金繰りが上手くいかなくなる可能性があるので、毎月の業績を考慮した無理のない支給額を決定する方法もあります。

同業他社と比較して大きく乖離がない支給額を決定する

同業他社に比べて大きく乖離している場合、税務調査において指摘される可能性があります。

同業他社より低く設定している場合には、資金繰りの関係など、調査官に対してしっかりと説明する事が出来れば問題ありません。

しかし、同業他社と比べて高く設定している場合には、税務調査で指摘される可能性があります。

よって、役員報酬を決める上では同業他社の支給額と乖離していないことも重要になります。

まとめ

役員報酬を決める上で重要なポイントは、「法人税と所得税を考慮して検討するケース」、「毎月の業績を予測して検討するケース」、「同業他社と比較して検討するケース」などの基準をもとに支給額を検討する事をおすすめします。

また、上述したように役員報酬を自由に変更する事を認めしまうと利益操作が容易に可能となります。

そこで、役員報酬については原則として、年に一度しか支給額を変更する事が出来ません。

そのため、役員報酬をいくら支給すれば良いか悩んでおりましたら、弊所へお気軽にご相談くださいませ。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士