会計・税務

【税制改正も反映】経営セーフティー共済とはどういった制度なのか徹底解説!?

中小企業は、キャッシュ・フロー計算書が非常に重要であることを前回の記事で解説しました。

主なキャッシュ・フローは取引先からの入金ですが、主要取引先が倒産してしまった場合、、自社の資金繰りが悪化し連鎖倒産するリスクにも繋がりますが、

これを防止する為の制度として、「経営セーフティー共済」という制度があります。

今回は、この経営セーフティー共済について、解説していきたいと思います。

経営セーフティー共済とは

経営セーフティー共済の概要

経営セーフティー共済とは、取引先が倒産したことにより、中小企業が連鎖倒産や資金不足による経営難を防止する為に設けられている制度です。

経営セーフティー共済へ加入している場合に受けられる内容としては、以下の通りです。

  • 無担保・無保証人で、掛け金の10倍の金額または、倒産した取引先に対する売掛金や受取手形の回収が困難になった金額のいずれか少ない金額の融資を受けることが出来ます。
  • 掛金については、毎月5,000円から20万円の範囲内で、最大800万円を限度として積み立てが可能です。
  • 掛金の納付期間が40ヶ月以上であれば、これまで納めた掛金の全額が戻ってきます。

加入条件

経営セーフティー共済へ加入する為の条件として、1年以上事業を行っている必要がある事に加えて、下記の表のいずれかに該当する必要があります。

※独立行政法人 中小企業基盤整備機構 「経営セーフティー共済の加入資格」引用
https://kyosai-web.smrj.go.jp/tkyosai/entry/index_01.html

経営セーフティー共済のメリットとデメリット

経営セーフティー共済のメリット

経営セーフティー共済は、上述したように取引先が倒産した場合の連鎖倒産を防ぐ為の制度であり、メリットとしては以下のようなものが挙げられます。

①すぐに融資を受けることが出来る

取引先が倒産した場合、上述したように無担保・無保証人で融資を受けることが可能です。

なお、取引先の倒産事由としては以下のような事由が挙げられ、「取引先の夜逃げ」である場合には、以下の事由からは除外されるので注意が必要です。

  • 金融機関からの取引停止処分
  • 災害による債権の不渡り
  • 法的整理
  • 私的整理

②節税効果をもたらすことが出来る

経営セーフティー共済へ加入している場合、掛金を経費として計上することが出来ます。

月額の掛金は、5,000円から20万円の範囲内で積立限度額は最大800万円まで行うことが可能です。

毎月20万円の積立を行っている場合には、年間240万円を経費として計上することが出来る為、節税に繋がります。

③40ヶ月以上の加入期間があれば、掛金が全額戻ってくる

掛金の納付期間が40ヶ月以上であれば、掛金の全額が戻ってきます。

ただし、掛金が戻ってきた際は、掛金の全額が課税されてしまうので注意が必要です。

毎月の掛金積立時には、経費計上が可能ですが、解約時にはこれまで積み立てた掛金が課税される為、節税施策としては課税の繰り延べという事になります。

④取引先の倒産以外の理由でも融資を受けることができる

取引先が倒産した場合に融資を受けることができるのは上述した通りですが、倒産以外の理由でも12ヵ月以上の掛金を納付している期間があり、使途が事業の運転資金などであれば無担保・無保証人で融資を受けることが可能です。

経営セーフティー共済のデメリット

経営セーフティー共済のメリットがある反面、デメリットについてもいくつかご紹介致します。

①掛金の納付期間が40ヶ月未満の場合には掛金が全額戻ってこない

掛金の納付期間が12ヶ月以上であれば掛金の8割以上が戻ってきますが、40ヶ月未満であれば全額は戻ってきません。

また、掛金の納付期間が12ヶ月未満である場合には、これまで納付した掛金が全額掛け捨てとなる為、注意が必要です。

②設立時には利用する事が出来ない

経営セーフティー共済の加入要件は上述した内容を満たす必要がありますが、上記に加えて、事業を1年以上継続して行っていることも加入要件になります。

したがって、事業を開始して1年未満の事業者は経営セーフティー共済へ加入する事が出来ません。

③解約時には解約手当金に対して課税される

経営セーフティー共済を解約した場合には、これまで積み立てた掛金が解約手当金として課税されます。

赤字になった事業年度など、解約する場合には、経営状況などをよく理解した上で、解約する事をおすすめします。

令和6年度税制改正により変更された内容

令和6年度の税制改正によって、経営セーフティー共済は一部変更になりました。

具体的には、令和6年10月以降は経営セーフティー共済を解約してから2年間は再加入する事が出来なくなりました。

したがって、解約後に再度すぐに掛金を経費として計上する事が出来なくなります。

この改正は、経営セーフティー共済へ解約と再加入を繰り返していた事業者が多く、経営セーフティー共済の不適切な利用を防止する観点から改正が行われました。

まとめ

以上が経営セーフティー共済の内容になります。

経営セーフティー共済は取引先が倒産した際に連鎖倒産を防止する為、融資を受けられる事に加えて、課税の繰延べを行う事も可能です。

このような制度を不適切に利用する事業者が増えており、一部改正が入りましたが、これまで同様に多くのメリットが挙げられることに変わりありません。

経営セーフティー共済へ加入をご検討される事業者の方は、是非弊社までご相談下さい。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士