税務調査で給与として否認されるケースはどういった場合?税理士が徹底解説!
従業員や役員へ支払う給与や報酬には、源泉徴収が必要になります。
また、消費税法上、給与は課税取引には該当しない不課税取引になります。
したがって、給与として認識せずに、何らかの経費を支払っていた際に、税務調査で給与として認識されてしまうと、源泉徴収が必要になり、消費税についても不課税取引として仕入税額控除の適用を受けることが出来ません。
今回は、自分では給与として認識していなくても、給与扱いされてしまうケースについて紹介したいと思います。
給与課税されるケースについて
社宅を貸している場合
社宅を従業員や役員へ貸している場合、賃貸料相当額以上を徴収していないと、会社が負担している社宅家賃は、従業員や役員に対する給与として扱われます。
この賃貸料相当額とは、実際にいくら徴収しなければいけないのかは具体的な算出方法があり、ここでは詳細な内容は割愛させて頂きますが、、固定資産税の課税標準額を用いて社宅家賃を算出します。
実際に給与課税されるケースとしては下記内容が挙げられます。
- 社宅家賃を無償で貸している場合
- 受け取っている社宅家賃が、計算した賃料相当額の50%未満(役員の場合は、100%未満)である場合
上記内容に該当した場合、従業員や役員に対する給与と認識されてしまいます。
食事を提供している場合
会社が従業員や役員へ食事を提供していることがあります。
この場合、下記要件をどちらも満たしていなければ給与として課税される事になります。
- 食事代の半分以上を本人が負担している。
- 下記算式の金額が1ヶ月あたり3,500円以下である事。
「1ヶ月の食事代 ー 本人が負担している金額 ≦ 月額3,500円」
上記要件を満たしていないと、会社が提供した食事代から本人が負担している金額を控除した金額を超える部分について、給与として認識されます。
通勤手当を支給している場合
会社の多くが従業員や役員へ通勤手当を支給している事かと思います。
しかし、この通勤手当に対しても高額な場合には給与として認識されてしまう事があります。
給与課税されてしまう金額は、通勤距離によりますが、具体的な内容は下記の表をご参照下さい。
※「国税庁 タックスアンサーNo.2585_マイカー・自転車通勤者の通勤手当」引用
このように、片道の通勤距離の範囲を超えて通勤手当を支給している場合には、その超過金額が給与課税されてしまうので、注意が必要です。
リモートワークを行う際に使用する物品を支給する場合
新型コロナウイルスが流行した2020年以降、自宅で仕事をするリモートワークを認める企業が増えました。
リモートワークを行うにあたり、仕事用の備品を支給するなど、給与課税されないのか、下記ご参照下さい。
- パソコンや机などを支給する場合
→所有権が会社であれば給与課税はされない。本人に所有権があれば給与課税される。 - 本人が使用した電気代や通信費などを支給する場合
→業務に使用した部分は給与課税されない。 - 本人が利用したレンタルオフィス代を支給する場合
→本人が会社にレンタルオフィスの領収書を会社に提出している場合には、給与課税されない。
結婚、出産、香典などの慶弔関連を支給する場合
従業員や役員が結婚や出産をした場合の祝い金や香典などを支給した際に給与課税されるかどうかという問題は、その金額が常識の範囲内であれば給与課税されません。
慶弔関連の支給を考えている場合には、すべての従業員が公平に扱われるように、就業規則や慶弔規定を設けて支給額の根拠を説明できるように準備をしておく事が重要になります。
税務調査で給与課税と指摘された場合の影響
税務調査が入り、上述したような取引を指摘されて給与として認定された場合、下記のようなマイナス影響が発生します。
- 給与に対する追加の源泉徴収と源泉税納付が必要になること
- 給与として消費税の非課税取引になり、仕入税額控除が出来ず、追加の消費税負担が発生すること
- 対象者が役員の場合は、定期同額ルールが認められず、役員報酬も否認される可能性があること
- ペナルティとして、本税の10%相当額の不納付加算税を課税されること
給与課税として否認されてしまうと、大きな税負担が生じることになるため、その内容について税務上の取扱いを理解し、十分に注意しましょう。
まとめ
会社が使用人へ福利厚生として用意した社宅家賃や食事代、備品の支給など、上述したケースを利用している事業者の方は、本人の負担額は適切か、支給額が常識の範囲内であるか、などといった点を意識して見直す事が重要です。
給与課税されてしまうと、指摘された金額が多ければその分のペナルティも多くなります。
これらの内容について、ご不明な点がございましたらお気軽に弊社へお問い合わせ下さいませ。