【雇用保険の適用拡大】週10時間以上の勤務で加入対象に?その他の改正事項は?
多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化等のため雇用保険の内容が改正されることが決定しました。
その中でも特に影響が大きい変更点は、以下の3つです。
- 雇用保険の適用拡大(令和10年10月~)
- 失業手当の自己都合給付制限の見直し(令和7年4月~)
- 教育訓練給付の拡充(令和6年10月~)
本記事では雇用保険の適用拡大と合わせて自己都合離職者の給付制限の見直し、リスキリング支援の充実についても解説します。
雇用保険の適用拡大
週10時間以上で加入することになるのはいつから?
雇用保険の適用拡大は令和10年10月1日に施行されます。
週間就業時間が10〜19時間の雇用者数は2023年時点で約506万人。
適用拡大により500万人程度が新たに雇用保険の加入対象となります。
雇用保険に加入すると保険料はどれくらいかかる?
雇用保険の保険料率は一般の事業の場合、本人負担分が6/1,000、会社負担分が9.5/1,000です。
例えば時給1,200円で週に10時間勤務している場合、週12,000円×4週で月収は48,000円。ここにかかる保険料は本人負担分288円が、会社負担分が456円です。
短時間勤務の場合は給付内容が異なる?
給付は別基準とするのではなく、現行の被保険者と同様に、基本手当、教育訓練給付、育児休業給付等を支給するとされています。
適用拡大により変更になる点は?
①被保険者期間の算定基準について、加入期間としてカウントされるために必要な日数・労働時間数が以下のように変更されます。
賃金の支払の基礎となった日数 | 賃金の支払の基礎となった労働時間数 | |
現在 | 11日 | 80時間 |
令和10年10月1日以降 | 6日 | 40時間 |
②失業認定基準
労働した場合であっても1日の労働時間が下記にとどまる場合は失業日と認定されます。
現在 | 4時間 |
令和10年10月1日以降 | 2時間 |
③法定の賃金日額の下限額と最低賃金日額
法定の賃金日額の下限額と最低賃金日額も適用拡大に合わせて以下のように改正されます。
賃金日額の下限額 | 最低賃金日額 | |
現在 | 屈折点(給付率が80%となる点)の額の2分の1 | 最低賃金(全国加重平均)で週20時間を働いた場合を基礎として設定 |
令和10年10月1日以降 | 屈折点(給付率が80%となる点)の額の4分の1 | 最低賃金(全国加重平均)で週10時間を働いた場合を基礎として設定 |
実務上必要な手続きは?
詳細はまだ発表されていませんが、令和10年10月1日時点で週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の方について雇用保険加入の手続きが必要となります。
加入後はすでに雇用保険に加入されている方と同様に給与から雇用保険料を控除します。
失業手当の自己都合給付制限の見直し
現在は自己都合で退職した場合は失業給付(基本手当)の受給に当たって待期満了の翌日から原則2ヶ月の給付制限期間がありますが、これが1ヶ月に短縮されます。
給付制限が1ヶ月になるのはいつから?
給付制限の見直しは令和7年4月1日に施行されます。
ただし5年間で3回以上の自己都合離職の場合には、現行通り給付制限期間は3ヶ月となります。
教育訓練による制限解除
上記と合わせて、令和7年4月1日は離職期間中や離職日前1年以内に自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練を行った場合には、1ヶ月の給付制限自体すら解除されます。
教育訓練給付の拡充
リスキリング支援のため、教育訓練給付金の給付率の上限を受講費用の70%から80%に引き上げられます。
教育訓練給付の拡充はいつから?
前述した2つの改正に先立って令和6年10月1日から施行されます。
対象資格・講座の例
- 専門実践教育訓練給付金
- 医療・社会福祉・保健衛生関係の専門資格(看護師、介護福祉士等)
- デジタル関連技術の習得講座(データサイエンティスト養成コース等)
- 専門職大学院 等
- 特定一般教育訓練給付金
- 運転免許関係(大型自動車第一種免許等)
- 医療・社会福祉・保健衛生関係の講座(介護職員初任者研修等) 等
まとめ
本記事で解説した雇用保険の改正を時系列でまとめると以下のようになります。
- 令和6年10月1日:教育訓練給付の拡充
- 令和7年4月1日:自己都合離職者の給付制限の見直し
- 令和10年10月1日:雇用保険の適用拡大
特に雇用保険の適用拡大については労務担当者の実務にも影響が大きいためポイントを押さえておきましょう。
雇用保険については育児休業関係の給付についても改正が予定されています。(「出生後休業支援給付」「育児時短就業給付」の創設)