会計・税務

消費税の計算方法は1つではない!簡易課税制度について税理士が徹底解説!

消費税の納税額については、原則課税と簡易課税の2種類の計算方法があります。

一般的に、消費税は売上に対する消費税から経費に対する消費税を差し引いた金額を管轄税務署へ納める事になります。

上記の計算方法が原則課税になります。

一方で、簡易課税とは、売上に対する消費税のみを使用して納税額を計算する方法であり、その名の通り、簡易課税を採用している場合には納税額を計算する方法が原則課税に比べて簡単に行えます。

今回は、この簡易課税にスポットを当てて解説していきたいと思います。

簡易課税制度とは

簡易課税制度は、消費税の納税義務者であれば誰でも適用出来るという制度ではありません。

適用するためには、いくつか適用要件があるので、ここでは簡易課税制度を適用するための要件をご紹介致します。

簡易課税の適用要件

簡易課税を適用するためには、下記2点の要件を共に満たす必要があります。

①基準期間における課税売上高が5,000万円以下であること

基準期間とは、簡易課税の適用を受けようとする課税期間の2年前の課税期間を言います。

また、課税売上高とは、消費税が課税される売上を指します。

例えば、令和6年10月期の決算法人が簡易課税を適用する為には、基準期間(令和4年10月期)の課税売上高が5,000万円以下である必要があります。

②簡易課税の適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を管轄税務署へ提出していること

簡易課税の適用を受けようとする課税期間までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署へ提出している必要があります。

令和6年10月期の決算法人の場合であれば、令和6年10月期が開始する前日である令和5年10月31日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しておく必要があります。

簡易課税を適用した場合の具体的な納税額の計算方法について

簡易課税を適用した場合には、冒頭で述べたように、売上に対する消費税に対して、納税額を計算します。

具体的には、売上を業種ごとに第1種から第6種に分けて、それぞれに適用されるみなし仕入率を利用して納税額を計算する必要があります。

第1種から第6種の業種については以下の通りです。

業種区分業種内容みなし仕入れ率
第一種事業卸売業90%
第二種事業小売業80%
第三種事業製造業、建設業、農業、漁業など70%
第四種事業その他の事業60%
第五種事業サービス業、金融・保険業50%
第六種事業不動産業40%

上図より、該当する業種のみなし仕入率を利用して、消費税の納税額を計算します。

消費税の納付税額 = 売上に対する消費税 ー (売上に対する消費税×みなし仕入率)

例えば、小売業を営んでいる場合には、第二種事業であるため、みなし仕入率が80%となり、売上に対する消費税の20%が納付税額となります。

簡易課税制度のメリットとデメリット

簡易課税は上述した通り、売上高に対する消費税のみで納税額を計算します。

したがって、経費に対する消費税を集計する必要がないので、原則課税に比べて簡単に消費税の納税額を計算することが出来ます。

ここでは簡易課税のメリットとデメリットについてご紹介致します。

簡易課税のメリット

  • 原則課税に比べて消費税の納税額を計算するのが簡便的なので事務負担軽減に繋がる。
  • 売上が分かれば、消費税の納税額の予想がつきやすい。

簡易課税のデメリット

  • 簡易課税を選択していると、消費税の還付が受けられないので、固定資産の購入や大規模修繕といった大きな支出がある場合で、売上より経費や支払が大きくなる場合には簡易課税より原則課税を選択した方がおすすめ。
  • 簡易課税を一度選択すると、2年間は簡易課税を適用しなければならないという縛りがある。
  • 複数の事業を営む場合には、それぞれの業種ごとにみなし仕入率を用いて納税額を計算する必要があるので、原則課税に比べて計算が複雑になる

簡易課税を選択するかの判断とシミュレーション

簡易課税は、「その事業年度が開始する前日までに選択するかを決めなければいけない」「原則課税と納税額が大きく変わる可能性がある」という二つの特徴を持つため、年度の売上や損益を予想シミュレーションして、どちらの方法を採用すると有利になるのか判定する必要があります。

ですので、納税額を有利に勧めたい場合は、積極的に簡易課税制度を活用することをおススメします

また、シミュレーションの方法や詳細については、複雑な計算を行うこともあるので税理士など専門家に相談することを推奨します。

まとめ

今回は消費税の納付税額を計算する方法として、簡易課税制度について解説しました。

簡易課税では納税額の計算を簡便的に行うことが出来ますが、適用する為には事前に届出書の提出が必要であったり、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であるなどの要件があります。

一方、注意すべき内容として、簡易課税は消費税の還付を受けることが出来ないといったデメリットもあるので、税理士にも相談しながら簡易課税の適用を検討しましょう。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士