会計・税務

消費税における簡易課税制度の間違いやすいポイント

前回、消費税の納税額を計算する方法として、簡易課税制度について解説しました。

簡易課税の計算方法は、売上内容で消費税の納税額を計算する簡便的な方法ではありますが、売上内容によっては判断に悩むケースもあります。

今回はこの簡易課税制度の間違いやすいポイントを紹介したいと思います。

簡易課税制度の間違いやすいケース事例

簡易課税制度とは、売上内容のみで消費税の納税額を計算しますが、詳細な内容については前回公開した「消費税の計算方法は1つではない!簡易課税制度について税理士が徹底解説!」をご参照ください。

ここでは簡易課税制度の間違いやすいケース事例について解説していきたいと思います。

ケース1:製造業か製造加工業か

製造業の場合には、第三種事業として、みなし仕入率は70%になります。

ただし、製造業と一言で言っても、材料の支給状況によって、事業区分が異なるケースがあります。

具体的には、以下の通りとなります。

材料が支給されている場合
(製造加工業)
支給された材料を加工している場合には、第四種事業に該当し、みなし仕入率が60%になります。
材料を自社で準備している場合
(製造業)
自社で材料を準備して、製造している場合には、第三種事業に該当し、みなし仕入率が70%になります。

つまり、材料を自社で準備しているかどうかで判断が変わります。

一般的に、材料調達を自社で行う場合は、材料原価が含まれ原価率が高くなるため、みなし仕入れ率が高い第三種事業になります。

ケース2:固定資産の売却をした場合

所有している建物や車両などの固定資産を売却した場合には、事業内容に関わらず、第四種事業に該当し、みなし仕入率は60%になります。

ケース3:販売商品している商品が事業者向けか消費者向けか

販売している商品が、法人などの事業者向けに販売しているのか、それとも一般消費者などの消費者向けに販売しているのか、販売先によって前者の場合であれば、第一種事業に該当し、みなし仕入率が90%になります。

一方で後者の場合には、第二種事業に該当し、みなし仕入率は80%に該当します。

ケース4:2種以上の事業を営んでいるのに事業区分をしていない場合

簡易課税制度を選択しており、2種以上の事業を営んでいるのに全て同じ事業区分として処理している場合には、最も低い事業区分のみなし仕入率を適用する事になるので注意が必要です。

ケース5:2種以上の事業を営んでおり、1つの事業の課税売上高が75%以上の場合

2種以上の事業を営んでいる場合、1つの事業の課税売上高が全体の75%以上を占めている場合には、その75%以上を占めている事業区分のみなし仕入率を、課税売上高全体に対して適用することが出来ます。

ケース6:3種以上の事業を営んでおり、2つの事業の課税売上高の合計額が75%以上の場合

3種以上の事業を営んでいる場合、2つの事業の課税売上高が全体の75%以上を占めている場合には、その2つの事業のうち、みなし仕入率の高い事業については、その事業に適用されるみなし仕入率をそのまま適用し、その他の事業については、残りの事業のうち最も低い事業のみなし仕入率を適用することになります。

ケース7:簡易課税を適用した場合、2年間は簡易課税が強制適用になる

簡易課税は、適用したい課税期間が開始する前までに簡易課税制度選択届出書を提出しなければ適用することが出来ません。

注意が必要なのは、この簡易課税制度を選択すると2年間は簡易課税制度が強制適用になります。

したがって、簡易課税の適用を検討している場合には、2年間は簡易課税の適用が必要になる事を理解しておく必要があります。

まとめ

今回は簡易課税の間違いやすいケースについて紹介しました。

よくある間違いとして、事業区分やみなし仕入率の判断と適用が挙げられます。

実務上、簡易課税を適用した場合には2年間は簡易課税が強制適用になる点を認識していない事業者も多い印象を受けます。

簡易課税は消費税の納税額を計算する上では便利ですが、簡易課税を選択している期間に大きな支払いがあっても還付を受けることが出来ません。

したがって、簡易課税の適用を考えている場合には必ず税理士へ相談する事をおすすめします。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士