労務

業務委託契約は雇用契約とどう違う?企業側・労働者側のメリット・デメリットは?

業務委託契約とは

昨今では人手不足や多様な働き方の普及により「業務委託」という働き方が注目を浴びていますが、正社員やアルバイトなどの「雇用」と「業務委託」はどう違うのでしょうか?

この記事では、業務委託契約について

  • 雇用契約との違い
  • 企業側・労働者側それぞれのメリットデメリット

をご紹介していきます。

雇用契約とは?

労働者が雇用主のもとで労働を提供し、その対価として雇用主が賃金を支払う契約を「雇用契約」と言います。

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

民法第623条(雇用)

雇用契約を締結した労働者は、

  • 社会保険の加入
  • 労働時間の制限
  • 有給休暇の取得
  • 一方的な解雇の禁止

などの労働基準法による保護を受けることができます

業務委託契約とは?

業務委託契約には、「請負契約」と「委任契約(準委任契約)」の2種類があります。

請負契約とは?

請負契約は、成果物の完成を目的とする業務委託契約です。

成果物に対して報酬を支払うもので、完成までの過程は問いません。

ただし「成果物の完成」に対して報酬が支払われるため、万一完成しなかった場合には報酬を得られません。

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

民法第632条(請負)

請負契約を結ぶことが多い職種

  • デザイナー
  • ライター
  • イラストレーター
  • 美容師

委任契約・準委任契約とは?

委任契約は、業務を行った事実に対して報酬が支払われる業務委託契約です。

法律に関する業務を委託する際に結ばれるもので、弁護士・税理士・司法書士などとの契約が委任契約に当たります。

実際には法律行為以外の業務に対する契約が多く、こちらは「準委任契約」とされます

委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

民法第643条(委任)

準委任契約を結ぶことが多い職種

  • コンサルタント
  • バックオフィス職
  • システムエンジニア

雇用契約・業務委託契約の違いを表で整理

雇用契約業務委託契約
あり①指揮命令権なし
あり②勤務時間・場所の指定なし
あり③社会保険の加入なし
あり④労働基準法の適用なし

①指揮命令権

雇用契約を結ぶ場合、会社は労働者に対し、出勤日や労働時間・仕事の方法などについての指揮命令権を持ちます。

一方、業務委託契約では双方は対等な関係となり、受託者は自己の責任と裁量に基づいて業務を行います。

業務の過程や進め方に細かな指示を出すと「偽装請負」を疑われ、契約違反になってしまうため注意が必要です

②勤務時間・場所の指定

雇用契約では勤務時間・場所は会社によって指定されますが、業務委託の場合は会社が指示を出すことはできません。

③社会保険の加入

雇用契約では労働時間の条件を満たすと健康保険・厚生年金保険、雇用保険に加入でき、病気や怪我で仕事ができない時の保障や失業手当を受けられます。

業務委託の場合は自身で国民健康保険・国民年金保険に加入する必要があります

④労働基準法の適用

雇用契約では労働者は労働基準法による保護を受けられますが、業務委託では労働基準法が適用されません

業務委託契約をするメリット・デメリット

企業側のメリット・デメリット

企業側のメリット

・人件費を抑えられる

・業務の生産性が向上する

受託者は雇用契約ではないため、健康保険料や厚生年金保険料・雇用保険料などの社会保険料を負担する必要がありません。

また、正社員を雇用すると閑散期にも毎月固定の人件費が必要ですが、業務委託の場合は必要な時のみ委託できるため人件費を抑えられます

即戦力となる人材と契約することで、教育にかかる時間とコストも削減できます。

企業側のデメリット

・社内のスキルアップに繋がらない

・細かい指示が出せない

業務委託に頼りすぎていると社内にノウハウが蓄積されないというデメリットも。

雇用契約ではないので頻繁な指示は出せず、成果物のクオリティは受託者の腕任せになります。

労働者側のメリット・デメリット

労働者側のメリット

・働き方の自由度が高い

・努力次第で収入アップできる

③責任範囲が有限責任

事業承継が容易

会社に指揮命令権がなく、自由な時間・場所で働けるのが業務委託の魅力です。

また、自分のスキルや努力次第で大幅な収入アップも目指せます。

労働者側のデメリット

・労働基準法の保護を受けられない

・収入が不安定

労働基準法の保護を受けられないため、休日や労働時間についても自身で管理する必要があります。最低賃金も適用されないため、作業時間に対して報酬が安くなることもありえます。

毎月の給与が保証されておらず、健康保険や雇用保険にも加入できないため、病気で働けなくなった時などのために日頃から貯金しておく必要があります。

業務委託契約は雇用契約との同時締結も可能

業務委託契約は、雇用契約と同時に締結することも可能です。

例:正社員が業務時間外に別業務を業務委託として行う

その際は、労働時間や業務内容が重複しないよう注意し、雇用契約部分と業務委託契約の切り離しが必要である点に留意してください。

  • 業務委託契約を結ぶ際の契約書の内容に不安がある
  • 雇用契約にするべきか業務委託契約にするべきか悩んでいる
  • 偽装請負にあたらないか心配

などという場合は一度ご相談ください。

内容をしっかりとヒアリングし、適切な契約内容をご提案させていただきます。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士