労働保険

初めての退職者、何をしたらいい?保険関係・労基法周りのすべきことまとめ

前回の記事では従業員が入社した際にするべきことについてまとめました。

今回の記事では、初めて退職者が発生した時にするべき労務周りの対応や注意点について解説します。

社会保険・雇用保険の資格喪失手続き

退職する従業員が社会保険・雇用保険に加入している場合は資格喪失の手続きが必要です。

社会保険の資格喪失の手続き

社会保険の資格喪失は「被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出して行います。

申請時に添付書類は不要です。

資格喪失日は「退職日の翌日」になる点に要注意です。

  1. 退職日が月末退職→翌日喪失なので、退職月までの社会保険料がかかる
  2. 退職日が月末日以外の退職→前月までの社会保険料がかかる

扶養家族がいる場合は全員分の保険証を会社で回収し、管轄の協会けんぽに返送します。

保険証が回収できない場合は、「被保険者証回収不能届」を提出します。

雇用保険の資格喪失の手続き・離職票の発行

雇用保険は資格喪失の手続きと合わせて離職票の発行を申請します。

退職後に失業手当を受給する場合、本人が離職票をハローワークに持参する必要があります。

離職票の発行が遅れると失業手当の受給開始日が遅れてしまうため、退職後早急に手続きをする必要があります。

離職票は退職者の希望がある場合のみ発行となりますので、すでに次の就職先が決まっている場合など、失業手当の受給予定がなければ離職票を発行せず資格喪失の手続きのみをすることも可能です。

(後日やっぱり離職票が必要になった際は後から発行することもできます)

離職票を発行する場合は申請時に以下の書類を添付します。

  • 支給の内訳と交通費が分かる賃金台帳又は給与明細書 (記載した期間すべて)
  • 出勤簿又はタイムカード(記載した期間すべて)
  • 離職理由の確認できる書類のコピー(退職願・解雇通知書等)

住民税の異動届の提出

住民税を特別徴収している場合は普通徴収への切り替えが必要です。

手続きとしては、退職する従業員の住所がある市区町村に「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出します。

様式は各市区町村のホームページにてダウンロードが可能です。

最終月の給与計算には要注意

上記の手続きと合わせて、最終月の給与計算には注意すべき点があります。

月途中で退職する場合には日割り計算が必要

末締めの会社で15日に退職するケースなど、賃金計算期間の途中で退職する場合には、原則として給与を日割り支給することになります。

計算方法は会社によって異なり、就業規則がある場合は就業規則に則って計算します。

控除する保険料に注意

社会保険料は月単位で保険料がかかるため、給与を日割りする場合でも保険料は日割りされません。

また、最終月は2ヶ月分の保険料を控除する必要があるケースもあります。

例)当月末締め当月25日払い、社会保険料は翌月控除の会社で4/30に退職するケース

4/25の最終支給の給与から3月分・4月分の社会保険料を控除する必要がある

退職後に控除し忘れた社会保険料を徴収することは困難なため、気をつけて計算する必要があります。

住民税の一括徴収

退職月が1月〜5月の場合、その年度に控除すべきだった特別徴収する住民税の残額を一括徴収することが原則です。

ただし一括徴収する住民税の金額は給与の金額を超える場合などは普通徴収(退職後に従業員が自身で納付)に切り替えることも可能です。

余った有給は買取しなければならない?

「有給休暇の買取」は労基法上禁止されていますが、例外として消化しきれずに余ってしまった有給は買取が可能です。

ただし消化しきれなかった有給について、買取をすることは義務ではありません。

退職時の有給買取は在職中とは扱いが異なり、退職金扱いになる点に要注意です。

退職金扱いになると、以下の点が通常の給与と異なります。

  • 社会保険料・雇用保険の対象外となる
  • 所得税の計算方法が異なる
  • 退職所得の受給に関する申告書が必要

まとめ

従業員の退職の際には上記のような労務周りの論点があります。

手続きの漏れがあるとトラブルになりかねないため遅滞なく確実に遂行できるようにしましょう。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士