労務

書類準備は大丈夫?雇用契約時や求人募集時に就業場所・業務の変更範囲の明示が義務化されます

2024年の4月1日以降、労働契約の締結・変更時と求人の募集時に明示するべき事項が追加されます。

年明けから新年度まではあっという間。直前に慌てないためにも早めに改正の内容を理解し、対応の準備を進めましょう。

2024年4月1日〜法改正のポイント

①労働契約の締結・更新時の労働条件明示事項が追加されます

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156050.pdf

★無期転換ルールとは?

同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員、パートタイマー、アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。

出典: 無期転換ポータルサイト – 厚生労働省

《全ての労働者に対する明示事項》

  • 追加される明示事項:就業場所・業務の変更の範囲
  • 明示のタイミング:契約締結時・契約更新時

《有期契約労働者に対する明示事項等》

  • 追加される明示事項①:更新上限の有無と内容
  • 明示のタイミング:契約締結時・契約更新時

※更新上限を新たに設ける、または短縮する理由を有期契約労働者にあらかじめ(更新上限の新設・短縮をするのタイミングで)説明することが必要になります。

  • 追加される明示事項②:無期転換を申し込むことができる旨
  • 明示のタイミング:「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごと
  • 追加される明示事項③:無期転換後の労働条件
  • 必要なタイミング:「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごと

②求人掲載時の労働条件明示事項が追加されます

  • 従事すべき業務の変更の範囲
  • 就業場所の変更の範囲
  • 有期労働契約を更新する場合の基準

求人の掲載時にも、上記を明示することが義務化されます。

求人への明示のタイミング

ハローワーク等への求人の申し込み・自社ホームページでの募集・求人広告掲載の場合は求人票や募集要項に上記の内容を記載する必要があります。

求人広告のスペースが足りない場合は「詳細は面談時にお伝えします」とすることも可能ですが、この場合は面接など、最初に求職者と接触する時点までに全ての労働条件を明示する必要があります。

また、選考の過程で上記の条件に変更があった場合は速やかに明示しましょう。

2024年4月1日以降に会社がすべきこと

全従業員を対象に必要な対応

全従業員を対象に、雇用契約書において以下の条件を明示する必要があります。

  • 就業場所・業務の変更の範囲の明示

今回の改正に伴い、上記の改正ポイントを確認し、自社の雇用契約書・労働条件通知書を早い段階で変更しておきましょう。

下記のように、厚生労働省の「モデル労働条件通知書」を参考に記載することをお勧めします。

就業の場所(雇入れ直後)〇〇〇〇    (変更の範囲)〇〇〇〇
従事すべき業務の内容(雇入れ直後)〇〇〇〇    (変更の範囲)〇〇〇〇

モデル労働条件通知書 – 厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156118.pdf

有期契約社員を対象に必要な対応

有期契約社員を対象に、雇用契約書において以下の条件を明示する必要があります。

  • 更新上限の明示
  • 無期転換申込機会の明示
  • 無期転換後の労働条件の明示

こちらも厚生労働省の「モデル労働条件通知書」を参考に、下記のように記載します。

求人掲載時に必要な対応

求人掲載時に以下の条件をを明示する必要があります。

  • 従事すべき業務の変更の範囲
  • 就業場所の変更の範囲
  • 有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)

求人での明示事項の記載例 

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/001114110.pdf

法改正についてのよくある質問

雇い入れ直後の就業場所・業務から変更がない場合は?

「変更なし」と記載、または雇入れ直後・変更の範囲ともに同一の場所・業務を記載します。

就業場所・業務に限定がない場合は?

例えば就業場所については「海外(イギリス・アメリカ・韓国の3か国)及び全国(東京、大阪、神戸、広島、高知、 那覇)への配置転換あり」など、考えられる全ての場所を記載します。

リモートワーク・在宅勤務の可能性がある場合は?

「「テレワーク就業規則」第5条に規定する 在宅勤務の就業場所」など、リモートワークを行う場所についても記載します。

雇用契約・労働条件の明示を電子で行うことはできる?

原則は書面の交付による明示が必要とされていますが、労働者が希望した場合は、電子メール等の送信により明示することも可能です。

まとめ

入社後のトラブルを避けるためにも、雇入れ時の労働条件の明示はとても重要です。

書き方に不安がある場合、内容がわかりづらい場合はお気軽にご相談ください。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士