【みんな知らない】裁量労働制・フレックス・みなし労働‥結局どう違う?違いをわかりやすく解説!
通常の労働時間制とは異なる働き方ができる裁量労働制、フレックスタイム制、みなし労働時間制。最近は、多種多様な働き方が進み、新しい業種が増える中で、これらの勤務体系を導入する企業も増えてきています。
一方で、「どれも自由に労働時間を決めるイメージだけれども、結局どう違うの?」と混乱してしまう方も少なくないのではないでしょうか?
それぞれの違いについてわかりやすく解説します。
みなし労働時間制・フレックスタイム制どう違う?
裁量労働制はみなし労働時間制の一種
上図のように、「裁量労働制」とはみなし労働時間制の一種です。
また、フレックスタイム制はみなし労働時間制とは全く異なる制度です。
それぞれの制度の違い一覧
フレックスタイム制について詳しくはこちらをご覧ください。
対象となる業務
専門業務型・企画業務型は対象職種が限られている
専門業務型は19種類の業務のみ、企画業務型は企業の事業運営に関して企画、立案、調査および分析の業務のみに対象職種が限定されています。
◆ 専門業務型の対象職種
- 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
- 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。7において同じ。)の分析又は設計の業務
- 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法律第132号)第2条第28号に規定する放送番組(以下「放送番組」という。)の制作のための取材若しくは編集の業務
- 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
- 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
- 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
- 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
- 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
- ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
- 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
- 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
- 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務 (主として研究に従事するものに限る。)
- 公認会計士の業務
- 弁護士の業務
- 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
- 不動産鑑定士の業務
- 弁理士の業務
- 税理士の業務
- 中小企業診断士の業務
※2024年4月1日から「銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務(いわゆるM&Aアドバイザーの業務)」が追加され20種類となります。
事業場外みなし労働時間制はリモートワークにも適用
事業場外みなし労働時間制は主に外回り営業など、事業場外で勤務するため労働時間の管理が困難な場合に適用できます。
またテレワーク・リモートワークにも適用できる場合があります。
ただし、パソコンやスマホで常に連絡が取れる状態であるなど、実態として指揮命令や勤怠管理が可能な状態であればみなし労働時間制を適用することはできません。
フレックスタイム制はすべての業種が対象
フレックスタイム制は対象業務について制限はなくすべての業種の従業員に適用することができます。
労働時間のカウント方法
みなし労働時間制の場合
みなし労働時間制の場合は実際の労働時間に関わらず、あらかじめ定めた時間労働したとみなします。
例)みなし労働時間が8時間の場合
- 月曜 10時間
- 火曜 4時間
- 水曜 8時間
- 木曜 12時間
- 金曜 4時間
1週間の各日の労働時間が上記の時間だった場合、実際には日によって勤務時間が異なりますがどの日も8時間勤務したとみなします。
月曜日について2時間分の残業代を支給したり、火曜日について不足している4時間分を控除したりはしません。
フレックスタイム制の場合
フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲で日々の始業・終業時間を労働者が自由に決定できる制度です。
労働時間については、実際に労働した時間を労働時間としてカウントします。
例)
- 月曜 10時間
- 火曜 4時間
- 水曜 8時間
- 木曜 12時間
- 金曜 4時間
1週間の各日の労働時間が上記の時間だった場合、この週は38時間労働したこととなります。
フレックスタイム制では1〜3ヶ月の精算期間中にあらかじめ設定した総労働時間分勤務することとなっているので、各日の残業・早退については計算せず、精算期間終了後に過不足について計算します。
残業代の支給
みなし労働時間制の場合
上記の通り、各日についてあらかじめ定めた時間労働したとみなすため、実際の労働時間に過不足があったとしても、残業代を支給したり遅刻早退控除したりはしません。
ただし、あらかじめ設定している労働時間が法定労働時間を超えている場合は残業代の支給が必要です。
例)みなし労働時間が9時間の場合
法定労働時間(8時間)を超えている1時間分については残業代の支給が必要
フレックスタイム制の場合
上記の通り、精算期間(通常1ヶ月。3ヶ月までの範囲で設定できる)中の労働時間があらかじめ設定した総労働時間を上回った場合は残業代の支給が必要です。
例)精算期間:1ヶ月、総労働時間:160時間の場合
実労働時間が170時間だった場合、超過分の10時間について残業代の支給が必要
深夜割増手当の必要性
深夜時間帯(22時〜翌5時)に労働させた場合、どの労働時間制をとった場合でも深夜割増手当の支給が必要です。
勤怠管理の必要性
上記の深夜勤務時間の管理や長時間労働者への対応のためにも、どの労働時間制をとった場合でも勤怠管理は義務付けられています。
いずれも勤務時間帯が各人ごとにバラバラになるため、それぞれの労働時間制に対応できる勤怠システムを使用して管理しましょう。
制度導入の手続き
それぞれの導入には以下の手続きが必要となります。
専門業務型裁量労働制
- 労使協定の締結
- 監督署への届出
- 対象者本人の同意 ※2024年4月1日以降は本人の同意が必要となります。
企画業務型裁量労働制
- 労使委員会の4/5以上で決議
- 監督署への届出
- 対象者本人の同意
事業場外みなし労働時間制
- 就業規則への規定 または
- 労使協定の締結(みなし労働時間が法定労働時間を超える場合のみ監督署への届出が必要)
フレックスタイム制
- 就業規則への規定
- 労使協定の締結(届出は不要)
制度導入後の手続き
専門業務型裁量労働制:労使協定の更新
専門業務型裁量労働制は有効期間ごとに労使協定を更新する必要があります。
有効期間は最大3年に設定することが可能です。
企画業務型裁量労働制:監督署への報告
企画業務型裁量労働制の場合は、6ヶ月ごと以内に1回、労働基準監督署長への定期報告が義務付けられています。
まとめ
混同しがちなそれぞれの労働時間制について違いを解説しました。
ポイントは
- みなし労働時間制は対象となる業務が限定されている
- いずれの労働時間制をとっても勤怠管理と深夜割増手当の支給は必要
という点です。
「どの働き方が会社のカルチャーにあっているか」「専門業務型裁量労働制の対象となる職種か」など、お悩みの際はぜひご相談ください!