労務

正しい残業代の計算方法は?時給・日給・月給・歩合給、具体例で詳しく解説!

前回の記事では、未払い残業代が発生してしまう理由について解説しました。

本記事では時給・日給・月給それぞれの残業代の計算方法と注意点について解説します。

意図せず未払い残業代が発生してしまうことを防ぐため、正しく計算ができているかこの機会にぜひご確認ください。

残業の種類

残業には「所定時間外労働」と「法定時間外労働」がある

残業には、法律で定められた労働時間(原則は1日8時間・週40時間)を超える「法定時間外労働」と、会社の就業規則や雇用契約で定められた所定労働時間を超える「所定時間外労働」があります。

割増が必要なのは「法定時間外労働」

残業代を支給する際、割増が必要なのは上記のうち「法定時間外労働」の部分です。

「所定時間外労働」については割増して支給する必要はなく、通常の賃金を支給すれば問題ありません。

例)所定労働時間7時間の従業員が1時間残業した場合は割増せず、通常の1時間あたりの賃金を支給する

時給・日給・月給それぞれの残業代の計算方法

残業代計算の基本

残業代は「1時間あたりの賃金×割増率×残業時間」で計算します。

時給の場合の残業代

「時給×割増率×残業時間」

時給の場合は、時給額がそのまま1時間あたりの賃金になります。

例)時給1,500円の従業員が1ヶ月に10時間(深夜でないものとする)残業した場合の残業代

1,500円×割増率1.25×10時間=18,750円

日給の場合の残業代

「日給÷1日の所定労働時間×割増率×残業時間」

日給の場合は、日給を1日の所定労働時間で割ることで1時間あたりの賃金を求めます。

例)日給15,000円、1日の所定労働時間7時間の従業員が1日に9時間労働した場合

1時間あたりの賃金:15,000÷7≒2,143円

残業時間2時間のうち、1時間は所定時間外労働のため割増は不要、残りの1時間は法定時間外労働のため25%の割増が必要です。

  • 所定時間外労働分:2,143円×1時間=2,143円
  • 法定時間外労働分:2,143円×割増率1.25×1時間≒2,679円

 合計4,822円の残業代の支給が必要です。

月給の場合の残業代

「月給÷月平均所定労働時間×割増率×残業時間」

月給の場合は、月給を月の平均所定労働時間で割ることで1時間あたりの賃金を求めます。

月の所定労働時間の算出方法は?

月の所定労働時間は、「年間労働日数×1日の所定労働時間÷12ヶ月」で計算します。

例)年間休日120日・1日の所定労働時間が8時間の場合

 年間労働日数は365-120=245日 245日×8時間÷12ヶ月=163.3時間

割増賃金の計算の基礎から除く手当
    • 通勤手当
    • 家族手当
    • 単身赴任手当
    • 住宅手当
    • 臨時に支払われる手当
    • 賞与 など

住宅の種類を問わず同額を支給している住宅手当など、一律で支払われている場合は割増賃金の計算の基礎から除外できないケースもあります。

例)基本給24万円、通勤手当15,000円、月所定労働時間160時間の従業員が月に20時間残業した場合の残業代

通勤手当の15,000円は割増賃金の計算の基礎から除くため、1時間あたりの賃金は240,000÷160≒1,500円。

1,500円×割増率1.25×20時間=37,500円

月60時間を超える残業の割増率は50%に

2023年4月1日以降、1ヶ月60時間を超える法定時間外労働については50%以上の割増賃金の支払いが義務となりました。

使用している給与計算ソフトによっては60時間を超える残業時間が自動で集計されないものもあるため、正しく設定できているか確認しておきましょう。

残業代の割増率まとめ

残業代の割増率

残業の種類割増率
法定時間外労働25%
月60時間を超える法定時間外労働50%
深夜労働(22時〜5時)25%

月60時間を超える法定時間外労働の割増については、月60時間を超えたら残業時間の全てについて50%の割増が必要なわけではなく、60時間を超える残業時間にのみ50%の割増率が適用されます。

例)1ヶ月の残業時間の合計が75時間の場合

  • 60時間分については割増率25%で計算
  • 15時間分については割増率50%で計算

残業時間が深夜に及んだ場合の割増率

残業の種類割増率
法定時間外労働+深夜労働50%(25%+25%)
月60時間を超える法定時間外労働+深夜労働75%(50%+25%)

例)所定労働時間が9時〜18時(休憩1時間・実働8時間)、時給1,000円の従業員が23時まで残業した場合

  • 18時〜22時の残業については1,000×1.25×4時間=5,000円
  • 22時〜23時の残業については1,000×1.5×1時間=1,500円

 合計6,500円の残業代の支給が必要です。

残業代の計算についてのよくある質問

残業代は15分・30分単位で支給してもいい?

1日ごとの残業代は1分単位で支給しなければならないと定められているため、15分・30分等で切り捨てて計算することはできません。

ただし、月の総残業時間について30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げとして計算することは例外的に認められています。

固定残業代を支給している場合の残業代の計算は?

固定残業代を支給している場合は、残業時間のうち固定残業時間を超えた分について別途残業代の支給が必要となります。

そのため、固定残業代を支給している従業員についても勤怠管理をすることが必要です。

例)40時間分の固定残業代を支給している従業員が50時間残業した場合

40時間を超えて残業した10時間分について残業代を計算し、支給する必要がある。

歩合給を支給している場合の残業代の計算方法は?

歩合給を支給している場合は、歩合給に対する残業代も支給します。

歩合給の残業代(1ヶ月当たり)は「歩合給÷月の総労働時間×0.25×残業時間」で計算します。

例)基本給24万円、歩合給10万円、月所定労働時間160時間の従業員が月に40時間残業した場合の残業代

  • 固定給(基本給)分の残業代:1時間あたりの賃金は240,000÷160≒1,500
    1,500×1.25×40=75,000円
  • 歩合給分の残業代:100,000÷200×0.25×40=5,000円

合計80,000円の残業代を支給します。

まとめ

残業代の計算方法は複雑で、計算ミスや給与ソフトの設定もれで意図せず未払い残業が発生する恐れもあります。

ミスを防ぎ、煩雑な業務による負担を軽減するために社労士・税理士に委託するのも方法の1つです。

弊所でも給与計算を受託しておりますのでぜひご相談ください。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士