労務

スタートアップに多い!偽装請負に陥りがちな業務委託の3パターン

近年では副業・兼業人口の増加という背景もあり、メンバーを採用する際に、雇用だけでなく業務委託という形式をとることも多くなってきています。

特にスタートアップや設立後間もない会社では資金力がまだない中で多様な働き方のメンバーが所属しており、雇用でなく業務委託という形を取ることが多いです。

雇用契約を結ばなくても優秀な人材に仕事を依頼できるという大きなメリットがありますが、業務委託・雇用契約の線引きがきちんとできていないと「偽装請負」という違法状態に陥るリスクがあります。

本記事では

  • 「業務委託契約」が認められる要件と偽装請負について
  • スタートアップに多い偽装請負に陥りがちなパターン

について解説します。

業務委託契約と偽装請負

「業務委託契約」と認められる要件

雇用契約ではなく業務委託契約であると認められるための重要なポイントは以下の2つです。

  1. 会社が指揮命令をしていないこと
    (入退社時間の管理をしていない/細かな業務遂行の方法については指示していない)
  2. 独立性があり、対等な関係にあること
    (仕事を受けるか否かを独立して判断できる関係にある/PCなどの仕事道具を原則自己負担している)

▼業務委託契約についてはこちらもご覧ください

「偽装請負」とはどんな状態?

簡単にいうと「業務委託契約を結んでいるのに、雇用している従業員と同じような働き方をさせている状態」を偽装請負といいます。

雇用契約の場合は労働基準法が適用されるため最低賃金や有給休暇、社会保険の加入等が保証されていますが、その適用がないままに同様の働き方をさせていては労働者の不利益となるため、偽装請負は法律で禁止されています。

▼偽装請負についてはこちらもご覧ください

IPO時の労務監査・デューデリジェンスでチェックされる

偽装請負が発生していないかどうかは、スタートアップにおいては出資時やExit時の労務デューデリジェンスや労務監査で必ずチェックされる項目の一つです。

労務監査・デューデリジェンスに向け整備しておきたい事項については以下の記事にまとめています。

スタートアップに多い偽装請負に陥りがちな3つのパターン

①勤怠管理をしている

よく見られるのが、業務委託のメンバーについても勤怠管理をしてしまっているケースです。

出退勤時間の記録やタイムカードへの打刻などの勤怠管理をしていると、「指揮命令」をしているとみなされます。

勤怠管理ソフトの使用はもちろん、チャットツールで出社・退勤の報告をさせることもNGです。

業務の成果を確認したいのであれば時間数で測るのではなく、業務報告書を提出してもらう等の方法をとるようにしましょう。

また、時間給制をとる場合には必然的に勤務時間の管理が必要となるため、業務委託メンバーの報酬については「時間給制」もやめておいた方が無難です。

時間単価を決めている場合はあらかじめ業務にかかる工数を予測して月額を決定し、業務時間の超過や不足があれば合意のうえ随時調整する形をとると良いでしょう。

②業務用のPCを支給している

原則として業務委託の場合は業務に使用するPC等の備品は自身で用意する必要があります。

よかれと思ってPC・プリンタなど業務に使用する備品を支給している場合も偽装請負であるとみなされる可能性があります。

PCを貸与しているだけで直ちに偽装請負とされるわけではありませんが、PCの貸与について別途契約を結ぶ・使用した実費分の費用を請求する等、事前に取り決めは必要です。

③正社員と同様の基準で評価している

正社員と同様の評価基準で業務委託メンバーを評価しているケースも偽装請負であると見なされる可能性があります。

もちろん業務委託の場合でも、成果に応じて報酬の単価を変更することは問題ありませんが、人事・評価制度には会社の理念やカルチャーが強く反映されます。

そのため、雇用契約の社員と同じ制度に当てはめて評価することは業務委託の評価には馴染みません。

単価や契約を継続するかを判断するために評価したい場合は、正社員に適用している評価基準ではなく純粋な成果だけで判断できるような別の基準で評価しましょう。

まとめ

気づかないうちに陥りがちな偽装請負ですが、法律で禁止されているため違反すれば当然罰則もあります。

また、偽装請負である=「業務委託ではなく雇用である」とみなされた場合、契約当初からの残業代を遡って支給しなければならない、というようなリスクもあります。

どういったケースが偽装請負になるのか、社内では判断が難しいという場合はぜひお気軽にご相談ください。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士