助成金

【担当者必見】はじめてのキャリアアップ助成金申請の注意点と流れ

前回の記事では、キャリアアップ助成金の改正内容についてご紹介しました。

今回は「今いる有期雇用の従業員を正社員にキャリアアップさせたい。せっかくならキャリアアップ助成金の申請もしたい。」という場合のフローをご案内します。

初めての助成金申請で何から手をつければわからないけど自社でチャレンジしたい、という方はぜひご覧ください。

①対象者の現在の雇用契約書を確認

キャリアアップ助成金の支給申請の対象になるのは、有期契約社員または無期契約社員が正社員に転換したケースです。

ここで重要なのが、雇用形態について就業規則またはそれに準ずるものにおいて区分が明確にされているかどうかです。

就業規則の内容が正社員とそれ以外の非正規従業員に分かれていない場合、あらかじめ就業規則を改訂しておく必要があります。

また、申請には非正規従業員として入社した際の雇用契約書や労働条件通知書も添付が必要です。

雇用契約書・労働条件通知書は本来作成するべきものですが、もしも作成していなかった場合は申請が難しくなります。

②対象者の雇用期間を確認

キャリアアップ助成金は、雇用期間6ヶ月以上の従業員を正社員に転換した場合に支給されます。

例えば入社から5ヶ月で正社員に転換した場合は対象外となります。

以前は有期契約社員または無期契約社員として入社してから3年以内のみの従業員のみが対象でしたが、2023年11月29日の改正で雇用期間の上限が撤廃されました。

③キャリアアップ計画の作成・届出

キャリアアップ助成金を申請するには、正社員転換を実施する前にキャリアアップ計画を労働局長に届け出る必要があります。

正社員に転換した日が計画を届け出た日より1日でも早いと助成金の対象外になってしまうので気をつけましょう。

計画書の様式は厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。

様式はこちら:https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000922122.pdf(PDF)

④就業規則に正社員転換の規定を定める

新たに正社員転換制度を導入する場合は、転換の実施前に以下の内容を就業規則にて定める必要があります。

  1. 面接試験や筆記試験など、正社員に転換するための手続きの方法
  2. 正社員になるための要件(勤続年数、人事評価結果、所属長の推薦などの客観的に確認可能な要件・基準などをいいます。)
  3. 正社員転換の実施時期

また、正社員には「賞与または退職金の制度かつ昇給が適用されている」ことも要件となります。

⑤規定に基づいて正社員転換を実施

上記の規定に基づいて面談や試験を実施し、正社員に転換します。

転換時には雇用契約書を結び直す必要があります。(雇用契約書は助成金申請時の添付書類にもなります。)

正社員転換時の注意点として、正社員に転換する前後で給与の支給額が3%アップしていることが要件です。

上記を合わせて見ると、正社員転換後には

  • 給与を3%アップ
  • 昇給制度を適用
  • 賞与または退職金の制度を適用

というように待遇の改善が求められます。

会社によっては有給や休職、特別休暇などの規定でも正社員を好待遇にしているケースもあります。

また、正社員に転換するキャリアアップに比べ、正社員から非正規従業員に戻すことはかなり難しいです。

キャリアアップ助成金の助成額は大きいですが、助成金のためにむやみに正社員化を実施せず慎重に検討するべきだと言えるでしょう。

⑥12ヶ月継続雇用後に支給申請

正社員として12ヶ月の継続雇用後、支給申請が可能になります。

申請時期は、正社員として12ヶ月雇用した給与を支給した日の翌日から2ヶ月間です。

例えば末締め15日払いの会社の場合、4/1に正社員転換をすると12ヶ月間経過する翌年の3/31、給与の支給日は翌年4/15です。

この場合の申請時期は正社員に転換した4/1の翌年4/16〜6/15。

申請時期は正社員転換した日から1年以上先になるうえ、1日でも過ぎると申請ができなくなるのでスケジュール管理が重要です。

申請後は労働局で書類がくまなくチェックされ、問い合わせがあれば適宜対応が必要です。

2人目以降の申請の注意点は?

キャリアアップ計画の有効期限を過ぎていないか

キャリアアップ計画の有効期限は5年間です。

前回の申請から間が空いている時は、まずは有効期限が切れていないか要チェックです。

期限が切れている場合、対象者の正社員転換の日までに再提出しましょう。

1年で20人以上の申請をしていないか

キャリアアップ助成金の申請は1年度1事業所あたり20人です。

従業員数が多く、正社員転換も頻繁に行っている場合はこれを超えていないか確認しましょう。

まとめ

  1. 対象者の現在の雇用契約書を確認
  2. 対象者の雇用期間を確認
  3. キャリアアップ計画の作成・届出
  4. 就業規則に正社員転換の規定を定める
  5. 規定に基づいて正社員転換を実施
  6. 12ヶ月継続雇用後に支給申請

助成金の申請は準備する書類が多く、不備があると苦労して申請しても支給されないことも。

自社で申請しようと思っていたが難しい、これで合っているのかわからない、という場合はぜひご相談ください。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士