労務

「年金事務所から社会保険調査の案内が!」何を指摘される?対策は必要?

年金事務所からいきなり「調査のお知らせ」が届いてドキッとした経験はありませんか?

社会保険の調査は不正を疑っているものではなく、社会保険に加入しているすべての会社に対して定期的に実施されるものです。

本記事では社会保険調査について、どういった点が指摘されやすいのかを中心にまとめました。

社会保険調査とは?

何を調査するためのもの?

社会保険調査とは、社会保険(健康保険・厚生年金)の未加入が無いか、漏れなく手続きができているかを調査するためのものです。

2022年以降は社会保険の適用拡大による法改正もあり、年々調査が厳しくなっていると言われています。

どれくらいの頻度で調査される?

調査が入るタイミングは大きく分けて2つ。

  1. 設立時・新規適用時調査(設立・新規適用から1~2年以内)
  2. 数年ごとの定期調査(3〜5年に1度の実施。会社数が少ない地域では2〜3年ごとに1度調査が入ることも)

訪問の場合と郵送の場合がある

タイミングや地域によって、

  • 年金事務所に書類を持っていく
  • 年金事務所の担当者が会社に来る
  • 書類を郵送する

の3パターンの場合があります。

コロナ禍から郵送のケースが増えていますが、地域によっては訪問の場合もあるかと思います。

訪問の場合は目の前で書類をチェックされるので緊張感がありますが、見られるポイントは訪問でも郵送でも同じです。

社会保険調査で見られる書類

提出が必要な書類一覧

  • 労働者名簿
  • 徴収高計算書(源泉税の納付書)
  • 賃金台帳
  • 出勤簿
  • 就業規則
  • 社会保険関係書類

上記は社会保険に入っている人/入っていない人、正社員/アルバイトに関わらず全員分を提出する必要があります。

必要書類は調査のお知らせに記載されており、その都度変わることもあるので指示に従って準備しましょう。

業務委託の方は会社では社会保険に入らないため提出不要です。

期間は2年間分

上記の書類は過去2年間分を提出する場合がほとんどです。

これは社会保険料支払いの時効が2年であるためです。

こちらもお知らせに「◯年×月分から◯年×月分まで」と記載されているので、指示に従いましょう。

調査時によくある3つの指摘

①社保加入対象の人が加入できていない

出勤簿・賃金台帳を確認され、正社員の3/4以上の時間の勤務があれば(所定40Hの会社なら週30H以上働いていたら)なぜ社会保険に入っていないか確認が入ります。

社会保険に加入させるよう指示された場合は最大で2年間遡って加入することになります。

この場合、社会保険料も過去2年分が一気に徴収されます。

②月額変更が漏れている

賃金台帳を確認され、固定給に変動があったのに月額変更が漏れていることがあると指摘が入ります。

この場合は最大で2年間遡って月額変更の届出をし、差額の保険料を支払うことになります。

③賞与支払届を出していない

賃金台帳を確認され、賞与が出ているのに賞与支払届が出ていない際にも指摘されます。

この場合も最大で2年間分遡って賞与支払届を提出し、その分の社会保険料が一気に徴収されることになります。

調査の前に対策は必要?

年金事務所の担当者が確認してくれるので準備は不要

必要な書類をまとめて提出すると、年金事務所の担当者が確認してくれるため、特に準備は不要です。

余裕があれば上記の3つのポイントについて確認しておくと良い

余裕がある場合は上記の指摘事項を参考に、指摘されそうな点について事前に確認しておくと「いきなり高額の社会保険料を納めなければならない」と焦る必要がなくなります。

社会保険の加入漏れがないか?

以下のような場合は指摘が入る可能性が高いです。

  • 外国人だから社会保険に入らなくていいと思っていた
  • 本人が嫌がるので社会保険に加入させられていない
  • 途中で勤務時間が長くなったけれど社保未加入のままになっているパートの人がいる
  • 契約上は週20時間勤務になっているけど実態としてずっと30時間を超えて働いている

▼社会保険の加入条件について、詳しくはこちらをご覧ください

賞与と判断されそうな臨時の手当の支給がないか

以下のような場合は指摘が入る可能性が高いです。

  • リファラル採用の報酬を支給しているが社会保険料を払っていない
  • 年度末に全社員一斉に特別手当を支給している
  • 毎年、年度末に処遇改善手当をまとめて支給している(介護・保育の場合)

 「賞与の性質があるようなものではない」と説明できるものであれば、調査時に指摘されても説明できるよう準備しておきましょう。

社会保険調査についてのよくある質問

お知らせが来たのに気づかず期日を過ぎてしまっていた/多忙で書類の用意が間に合わない

お知らせに気づいた時点・間に合わない思った時点で早めに年金事務所に相談しましょう。

相談のうえ、日程を後ろ倒しにするなど対応してくれます。

指摘されて発生した社会保険料を払わなくていい方法はある?

社会保険料を払わなくていい方法はありません。

納めた社会保険料は従業員の年金額にも関わってきます。

手続きもれが重なっていた場合など大きな出費になることもありますが、きちんと納めましょう。

勤怠をとっていない・就業規則がない等、必要な書類が準備できない

必要な書類が準備できない時は、その旨を年金事務所に伝えましょう。

他に代わりになる書類を出すのか、足りないものはそのままで調査を進めるのか指示してくれます。

手続きの漏れを指摘されたら罰金や罰則がある?

よほど悪質でない限り、社会保険調査で指摘があっただけで、直ちに罰金や罰則があることはないです。

とくに月額変更届や賞与支払届は、単純に忘れていた・必要だと気づかなかったケースも多々あるので指摘事項に迅速に対応すれば大丈夫です。

まとめ

いきなり調査のお知らせが届くと驚かれるかと思いませんが、社会保険の調査は「正しく社会保険に加入できているか」「手続きの漏れがないか」を確認するためのもの。

普段から正しく手続きできていれば怖いものではないですし、指摘があってもすぐに対応すれば問題ありません。

書類準備に手間取っている、指摘されそうな事項をあらかじめ確認してほしいという場合もお気軽にご相談ください。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士