【産休・育休手続き】担当者が押さえておきたい手続きを時系列で解説
従業員から妊娠したと報告があった時、会社として必要な対応や労務周りの申請について理解できていますか?
産休・育休については対応すべきことが多く手続きも複雑です。
社内に前例がない場合でも対応に困らないよう、必要な対応について時系列に沿って解説します。
法定の産休・育休の取得条件と期間

各種手続きの実施時期にも関わるため、まずは「産休」「育休」それぞれの取得要件と期間について正しく理解しておきましょう。
産休・育休・産後パパ育休取得のイメージ

産休(産前産後休業)の取得条件と期間
産休(産前産後休業)の取得条件:なし
条件はなく、雇用形態や勤続年数にかかわらず取得できます。
産休(産前産後休業)の期間:出産予定日42日前(双子の場合は98日)〜産後56日
産休開始時は本人の希望を聞いた上で決定できますが、産後については労働基準法において「産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。」と定められており、必ず休業させる必要があります。
ただし、産後6週間経った女性が請求した場合、医師が支障ないと認めた業務であれば就業させることができます。
育休(育児休業)の取得条件と期間
育休(育児休業)の取得条件:一定の取得条件があり、条件を満たしている場合のみ取得可能
育休を取得するための条件は以下の通りです。
- 有期雇用労働者の場合、子が1歳6か月に達する日までに契約が満了することが明らかでないこと
- 日々雇い入れられる者でないこと
- 労使協定の締結により取得対象外となっていないこと(引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により、除外することが可能とされる。)
上記の条件を満たしている場合、会社は育休取得希望の申し出を拒むことはできないと育児・介護休業法によって定められています。
育休(育児休業)の期間:産休終了後〜子どもの1歳の誕生日前日(最大で2歳の誕生日前日まで延長可能)
産後パパ育休(男性版産休)
産後パパ育休(男性版産休)の取得条件:育休と同様
取得条件は上記の育休と同様です。
産後パパ育休(男性版産休)の期間:産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて取得可能
産休・育休の具体的な期間を調べたい場合
出産予定日・出産日から具体的な期間を調べたい場合、厚生労働省のサイトで調べることができます。
⇩こちらのサイトで出産予定日を入力すると期間を自動計算できます。
従業員から妊娠した(妻が妊娠した)との申出があったら
従業員から妊娠した(妻が妊娠した)との報告があった場合にまず会社がするべきことは以下の2点です。下記の2点は2022年10月の法改正により義務化されています。
育児休業について以下の事項を知らせる
- 育児休業・産後パパ育休に関する制度
- 育児休業・産後パパ育休の申出先
- 育児休業給付に関すること
- 育児休業期間・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取扱い
育休取得の意向について確認するため面談等を実施する
男性に対しても育休取得の意向を確認することが義務付けられています。
また本人の希望があれば面談ではなくオンライン・メール・書面での対応でも可とされています。
育休取得の意向があった場合、取得要件を満たしているか確認しましょう。
産休・育休中に必要な労務手続き

手続き | 対象 | 手続き時期 | 支給金額 |
社会保険料免除申請(産休中) | 女性のみ | 産休期間中 | ー |
出産手当金支給申請 | 女性のみ | 産休期間終了後 | 直近12ヶ月間の標準報酬月額の平均÷30×2/3×支給日数 |
社会保険料免除申請(育休中) | 男女共通 | 育休期間中 | ー |
育児休業給付金支給申請 | 男女共通 | ・長期の育休の場合: 2ヶ月ごと ・数週間等短期の場合: 育休が終わり次第 | 育休開始〜180日間:産休開始前6ヶ月間の賃金÷180×支給日数×67% 育休開始180日〜は産休開始前6ヶ月間の賃金÷180×支給日数×50% |
社会保険料免除申請(育休延長中) | 男女共通 | 1歳〜1歳半/1歳半〜2歳までの育休延長期間中 | ー |
それぞれの注意点を以下で詳しく解説します。
①産休期間中の社会保険料免除申請
産休期間中は本人負担分・会社負担分ともに社会保険料が免除されます。
基本的に出産後に申請するため、産前休業分についてはいったん保険料が引き落とされ、申請後に調整されます。
②出産手当金支給申請
産休終了後(産後56日経過後)に申請し、その後協会けんぽで処理されてからの振込になるため、実際の支給は出産日からみると約3ヶ月後になります。
産休開始から約5か月間収入がなくなるため、本人の希望があれば分割して申請することも可能です。
③育休期間中の社会保険料免除申請
育休期間中も本人負担分・会社負担分ともに社会保険料が免除されます。
(主に男性が)短期間の育児休業を取得する場合の要件は以下の通りです。
【毎月の報酬にかかる保険料】
①その月の末日に育休を取得している月②育児休業等開始日が含まれる月に14日以上育児休業等を取得した場合
いずれかに該当する場合に免除される
【賞与にかかる保険料】
当該賞与月の末日を含む連続した1カ月を超える育休を取得した場合に限り免除される
④育児休業給付金の支給申請
原則は2ヶ月ごとの申請ですが、本人から希望がある場合等は1ヶ月ごとに申請することも可能です。
初回の申請時には母子手帳のコピー・振込希望口座の通帳のコピーを添付します。
本人に提出してもらう必要があるので、産休に入る前にアナウンスしておきましょう。
保育園に入れない場合は最大2歳まで受給できますが、そのためには1歳時点・1歳半時点の2回のタイミングで保育園に入園できなかったことを証明する書類の添付が必要です。
1歳・1歳半になる日までに認可保育園への入園を希望し、入園できなかったことを証明する必要があります。
例)10/15生まれなら10/1入園希望の申し込みをしたが入れなかった証明を提出
保育園への入園申し込みの時期や手続きは市町村によって異なります。
また、育児休業給付金を受給するためには「認可保育園」へ入園できなかった旨の証明が必要です。
⑤育休期間中の社会保険料免除申請(1歳半まで延長・2歳まで延長)
育休中の社会保険料免除も最大2歳まで延長できます。
こちらは保育園に入れなかった証明等の添付書類は不要です。
産休・育休についてよくある質問

入社して間もない社員が妊娠した場合は?
出産手当金・社会保険料免除は入社からの期間に関わらず適用されます。
育児休業給付金の受給については要件がありますが、前職の雇用保険加入期間を通算して受給できる可能性があります。
出産予定日より早く生まれた場合または遅く生まれた場合の産休期間は?
予定日より早く生まれた場合・遅く生まれた場合も、産休の期間は「出産予定日42日前(双子の場合は98日)〜出産後56日」です。
そのため、早く生まれた場合は産休期間が短く、遅く生まれた場合は産休期間が長くなります。
出産予定日より早く生まれた場合または遅く生まれた場合の社会保険料は?
予定日より早く生まれた場合・遅く生まれた場合は、上記の産休期間について社会保険料が免除されます。
ただし、実際に休業していることが条件です。
例えば、「出産予定日より早く生まれたが、実際に休業を始めたのは出産予定日42日前」という場合は、社会保険料が免除されるのは実際に休業を始めた出産予定日42日前の日を含む月からです。
産休・育休中の社会保険料は免除ですが、雇用保険料はどうなる?
雇用保険料は毎月の給与額にかかってくるので、給与が0円であれば0円です。
産休・育休中に支給される賞与については雇用保険料がかかります。
育休中に数日だけ勤務した場合は?
勤務状況により育児休業給付金が継続して受給できるか、社会保険料が免除されるかが決まります。
産休・育休中の住民税はどうする?
給与が発生しない産休・育休中の住民税については、以下の方法が考えられます。
- 普通徴収に切り替える
- 産休に入る前に一括徴収しておく
- 毎月振込等で徴収する
いずれの方法をとるべきか特に決まりはないため、本人と相談のうえ決定しましょう。
担当者が押さえておきたい産休・育休手続きまとめ
制度説明は法律で義務付けられています
男性にも確認が必要です
産休期間中に申請
産休終了後に申請
育休中に申請
復帰まで2ヶ月ごとに申請
延長期間中に申請
手続きについて不安がある場合はお気軽にご相談ください。