労務

役員報酬0円・役員賞与のみでも社会保険加入は必要?標準報酬月額・保険料はどうなる?

会社を設立した際・法人化した際は、従業員がいない場合でも社会保険への加入が必要です。

ただし例外として、役員報酬が0円の場合は社会保険には加入できません。

それでは、「役員報酬は支給しないが役員賞与だけは支給する」というケースでは社会保険への加入はどのようになるのでしょうか?

  • 役員賞与のみ支給する場合は社会保険への加入は必要か
  • 保険料はどうなるのか

について詳しく解説します。

役員報酬ゼロでも、役員賞与を支給するのはどんな時?

 まずは、なぜ役員報酬ゼロでも、役員賞与だけ発生するケースが起こるのでしょうか。役員報酬と役員賞与の特徴を考えてみましょう。

<役員報酬と役員賞与の特徴>

  • 役員報酬は、年度の初めに決めなければならず、原則として変更は出来ない
  • 役員賞与は、年度の初めに決めなければならず、「事前確定届出給与」を税務署に届出する必要があり、一度決めた金額と日付で必ず支給しなければいけない。

この特徴を踏まえて、以下のケースが発生します。

①年間業績や資金繰りが読めなく、役員報酬を定額で発生させることができないケース

例えば、設立当初や業績不安定な場合においては、資金繰りが読めないために、定期で支給しなければいけない役員報酬はゼロにしておき、役員賞与を事前に届出をしておきます。

そして、年度の途中でもし資金繰りが厳しい場合には、賞与支給しない決定を行う、というケースが考えられます。

②社会保険の節約を活用するケース

賞与においては、社会保険料の上限が存在します。

具体的には、厚生年金は1回の支給につき150万円まで、健康保険は年間の支給合計額で573万円までが上限となります。

特に厚生年金は、限度額が少ない為、役員賞与の配分を大きくすることで、社会保険の節約が可能です。

※このケースを活用した効果を得るためには、報酬設計上の注意事項があります(後述)。

役員賞与のみ支給する場合にも社保加入は必要

それでは、結論として、役員賞与のみ支給する場合も社会保険への加入は必要です。

「役員報酬が0円のため社会保険に加入していなかったが、役員賞与のみ支給することになった」というケースでは社会保険の新規適用の手続きが必要となります。

新規適用時に必要な書類は以下の通りです。

申請書健康保険・厚生年金保険新規適用届
添付書類・法人登記簿膳本・法人番号指定通知書など法人番号が確認できる書類・口座振替により保険料の納付を希望する場合は「健康保険・厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出書
申請時期社会保険の加入対象になった日から5日以内
提出先会社所在地の管轄の年金事務所

社会保険への加入時期はいつになる?

社会保険へ加入するのは、役員報酬を実際に支給する月からです。

例)12月に役員賞与を支給する場合は12月から社会保険に加入

標準報酬月額・保険料はどのようになる?

役員賞与のみ支給の場合、標準報酬月額は「支給する役員賞与の金額を12分割した金額」から決定されます。

例)役員賞与の金額が300万円の場合は 300万円÷12=25万円

標準報酬月額は26万円、令和6年度の東京都の場合の毎月の保険料は以下の通りとなります。

本人負担分本人負担分+会社負担分
健康保険12,97425,948
介護保険2,0804,160
厚生年金保険23,79047,580

役員賞与を報酬として考えるため、支給時に「賞与支払届」を提出する必要はありません。

算定基礎届にはどのように記入する?

算定基礎届にも、同様に「支給する役員賞与の金額を12分割した金額」を記入します。

例)毎年5月に役員賞与を支給する場合

  • 4月分:前年度の役員賞与÷12の金額を記入
  • 5月分・6月分:今年度の役員賞与÷12の金額を記入

添付書類は不要です。

社会保険の節約が活用できないので要注意

役員賞与の比率を大きくすることで、社会保険料の節約を行うケースがあります。

役員報酬ゼロで役員賞与のみの場合は、結局、12分割した報酬で社会保険加入と保険料負担が発生することになるため、メリットを得られない事になります。

ですので報酬設計をする時には注意が必要です。

まとめ

役員賞与のみを支給する場合も社会保険への加入は必須となります。

加入時期や標準報酬月額の考え方が通常とは異なるため手続き時は要注意です。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士