労務

【給与計算】ボーナスから控除するものは?計算のポイントとよくある質問

そろそろ12月の賞与に向けて面談などを実施し、支給額を考え始める時期ではないでしょうか。

毎月の給与を支給する際は社会保険料、雇用保険料。所得税、住民税を控除していますがボーナスの場合も同様に控除が必要です。

本記事ではボーナスから控除するものについて計算方法とポイントを紹介します。

ボーナスから控除するもの①社会保険料

控除する社会保険料の計算方法

ボーナスから控除するものの中でいちばん金額が大きいのが社会保険料です。

賞与から控除する社会保険料は以下のように計算します。

賞与の額面から1,000円未満の端数を切り捨てた額×保険料率

例)支給額が507,800円の場合

1,000円未満の800円を切り捨てた507,000円×保険料率で計算

2023年度東京都の場合は以下の金額になります。

  • 健康保険:507,000×10%=50,700
  • 介護保険:507,000×1.82%=9,227.4
  • 厚生年金:507,000×18.3%=92,781

本人負担分は上記の1/2なのでボーナスから控除するのは

  • 健康保険:25,350
  • 介護保険:4,613
  • 厚生年金:46,390

合計76,353円で、支給全体額の約15%が控除されることとなりますす。

ボーナス月に退職した場合は控除しない

社会保険料は、ボーナス支給月の末日時点で社会保険に加入している従業員からのみ控除します。

例)12/15にボーナスを支給する場合

12/31に退職→社会保険の加入資格は退職日翌日の1/1に喪失するので、支給月の末日である12/31時点では社会保険に加入しているため控除する。

12/30に退職→12/31に社会保険の加入資格を喪失しているため控除しない。

産休・育休中に支給した場合も控除しない

産休・育休中は社会保険料が免除されますが、ボーナスについても同様に免除されます。

ただし、育休中の場合はボーナス支給月の末日を含む、連続した1ヶ月以上の育休を取得した場合のみ免除されます。

「賞与支払報告書」の提出も忘れずに

賞与に対する社会保険料は、年金事務所に「賞与支払報告書」を提出することにより申告します。

提出が漏れると、「従業員から社会保険料を控除したのに納付ができていない」という状態になってしまうため忘れずに提出しましょう。

提出期限は賞与支払日から5日以内で、窓口への持参以外に郵送、電子での申請も可能です。

紙で申請する場合、様式はこちらからダウンロードできます:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/shoyo/20140821.html

ボーナスから控除するもの②雇用保険料

控除する雇用保険料の計算方法

雇用保険料は以下のように計算します。

賞与の額面×保険料率

雇用保険料の計算方法は毎月の給与から控除する際と全く同じです。

例)支給額が507,800円の場合

507,800×6/1,000(一般の事業の場合)=3,046

ボーナスから控除するもの③所得税

控除する所得税の計算方法

控除する所得税の金額は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」(令和 5 年分はこちら:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2022/data/15-16.pdf)に当てはめて計算します。

細かい内容は割愛しますが、前月の給与と扶養家族の人数で金額が変わってきます。

そのため、額面の金額が同じでも人によって控除される所得税の金額が異なることもあります。

住民税はボーナスからは控除しない

毎月の給与から控除される住民税ですが、ボーナスからは控除されません。

住民税は1年分を12で割って毎月の給与から控除され、会社を通して毎月納付されているのでボーナスから控除する必要はないからです。

給与計算ソフトを使うと楽で安心

毎月の給与計算よりさらに煩雑な計算が必要なボーナスの計算は給与計算ソフトを使用すると確実です。

社会保険の電子申請システムと連携できるソフトを使用すれば、従業員ごとの賞与額を自動で反映してくれるので賞与支払届の提出も楽になります。

ボーナスから控除するものについてのよくある質問

賞与支払届の提出が遅れた場合・忘れていた場合は?

提出期限は賞与支払日から5日以内ですが、遅れても提出はできます。

電子申請・郵送での手続きも可能です。

従業員の将来の年金額にも関わるため、提出が遅れている・漏れていることに気づいたら直ちに提出しましょう。

提出できていない場合、年金事務所の調査があった際にも指摘される事項になります。

産休中・育休中の賞与、雇用保険料と所得税も免除?

免除されるのは社会保険料のみで、雇用保険料・所得税は控除します。

リファラル採用のボーナスからも控除する?

リファラル採用などの際に支給するボーナスからも上記のものを控除します。

(対象となるのは紹介した側、された側し支給されるボーナスの両方です)

とくに手渡しの場合などはうっかり忘れがちなので要注意です。

控除と合わせて社会保険の「賞与支払届」も提出が必要です。

賞与の予定月に支払いをしなかった場合は届出はいらない?

賞与を支給しなかった場合は年金事務所に「賞与不支給報告書」の提出が必要です。

様式はこちら:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/todokesho/shoyo/20140821.html

提出が遅れた場合は、年金事務所から賞与の金額についての確認の文書が届きますので直ちに対応しましょう。

手取りでぴったり30万円の賞与を支給したい

社会保険料等を控除しないわけにはいかないので、金額を微調整して支給したい金額に根気よく合わせていく必要があります。

ネットで検索すると、支給したい手取り金額と都道府県・前月の給与・扶養家族の人数を入力すれば額面給与を算出してくれるツールも出てきます。

ツールを使用した際もそれぞれの控除額を計算しての見直しは必須です。

まとめ

ボーナスの計算は、毎月の給与計算以上に複雑で工数もかかる業務です。

従業員が増え時間を取られるようになってきたら給与計算ソフトの導入、社労士への代行依頼もおすすめです。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士