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【節税対策】法人が一定の資産を買換える場合の特例について徹底解説

法人が、現在所有している不動産を売却し、その後、新たに不動産を購入した場合、税金を一時的に抑える事が出来る特例があるのをご存知でしょうか。

一般的に、このことを不動産の買換特例と言います。

今回はこの不動産の買換特例について、基礎的な内容を解説していきたいと思います。

不動産の買換え特例とは、どういった内容なの?

不動産の買換特例とメリット

不動産の買換特例とは、既に所有している不動産を売却し、その後、新たに不動産を購入した場合に、売却時に発生した売却益に対する課税を抑える事が出来る特例です。

ただし、ご認識しておいて頂きたい点として、税金を一時的に抑える事が出来る課税の繰延べであり、税金を直接安くすることが出来るわけではない点には注意が必要です。

ですので、そのメリットは、一次的な納税負担を先延ばしにすることで手元資金の流出を防ぐことが出来、余裕資金を投資などに充てることが可能になることとなります。

買換特例の具体的な節税効果

上述した通り、買換特例を適用した場合、不動産の売却益に対する課税を抑える事が出来ますが、実際にどのくらいの節税効果が一時的にあるのでしょうか。

具体的には下記算式により求められた金額が圧縮損として、計上することが可能です。

不動産の買換特例による圧縮損=圧縮基礎取得価額(注1)×差益割合(注2)×80%

(注1)買換資産の取得価額又は譲渡資産の譲渡価額のうち、いずれか低い金額

(注2)差益割合=[譲渡価額-(譲渡資産の帳簿価額+譲渡時にかかった経費)]/譲渡価額

実際に、下記具体例より解説したいと思います。

なお、譲渡資産>取得資産を前提として計算しています。

  • 譲渡資産の譲渡価額10億円
  • 譲渡資産の帳簿価額1億5,000万円
  • 譲渡資産の譲渡費用5,000万円
  • 買替資産の取得価額3億円

① 不動産の売却益

10億-(1億5,000万+5,000万)=8億円

② 買換特例による圧縮損

1億5,000万(※譲渡資産の帳簿価額)×0.8(差益割合)×80%=9,600万円

③ ①−②

8億-9,600万=7億400万円

上記より算定された圧縮損に税率を乗じた分だけ、買換特例により法人税を一時的に抑える事が出来ます。

買換特例を適用する為に必要な要件とは?

買換特例とは、不動産を売却して新たに購入した場合に適用が可能になります。

ただし、買換特例を適用する為にはいくつか要件を満たしている必要がある為、以下では適用要件について譲渡する不動産と、購入する不動産のそれぞれについてご紹介します。

譲渡物件の適用要件とは

譲渡する資産の適用要件は、下記項目を全て満たしている必要があります。

  • 譲渡した年の1月1日時点で、所有期間が10年超であること
  • 国内にある土地、建物、構築物のいずれかであること
  • 事業において使用していること
  • 令和8年3月31日までに売却していること

購入物件の適用要件とは

購入する資産の適用要件は、下記項目を全て満たしている必要があります。

  • 購入資産を、譲渡した年の前年、譲渡した年、譲渡した年の翌年中のいずれかで取得し、1年以内に事業の用に供すること
  • 国内にある土地(300m²以上のもの)、建物、構築物であること
  • 購入する資産が土地の場合、購入した土地の面積が、譲渡した土地の面積の5倍以内であること

まとめ

買換特例の基本的な内容と、適用する事によるメリットについて解説しました。

今回は既存の不動産を売却し、その後に新たな不動産を購入したケースを例に解説しましたが、新たに不動産を購入し、その後に不動産を売却するケースも買換特例の適用を受ける事が可能です。

不動産の買い換えを検討している事業者の方は、買換特例という制度があることを認識して頂けたら幸いです。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士