インボイス制度導入後における事業者への負担軽減措置について
前回はインボイス制度の概要や、インボイス制度導入後に適格請求書発行事業者からの仕入れでないと仕入税額控除の適用を受けることが出来ない点について解説しました。
なお、前回の記事は下記ご参照ください。
今回はインボイス制度が導入されてから一定期間、事業者への負担軽減措置である仕入税額控除の経過措置と、2割特例について解説していきます。
なお、この負担軽減措置である仕入税額控除の経過措置と2割特例は、両者とも2割という点で同じですが、全く異なる負担軽減措置であるということを理解したうえで本稿を読んで頂く為に下記表を理解して頂けますとスムーズに読み進めて頂けるかと思います。
仕入税額控除の経過措置 | 2割特例 | |
---|---|---|
適用対象者 | 免税事業者から課税仕入れを行う課税事業者 | 免税事業者から適格請求書発行事業者として課税事業者になった事業者 |
概要 | 免税事業者からの仕入/経費をインボイス制度導入後6年間は一部消費税の仕入税額控除を適用できる | 消費税の納税額を売上に対する消費税の2割とする |
効果 | 3年:80%控除(2割負担) 6年:50%控除(5割負担) ①インボイス制度導入後最初の3年間:80%控除(2割負担) ②①経過後の3年間:50%控除(5割負担) | 「課税売上高×消費税率×2割」と「本則課税又は簡易課税により計算した消費税額」のいずれか有利な消費税の納税額を選択できる |
仕入れ税額控除の経過措置とは
経過措置が設けられている理由
インボイス制度が導入される2023年10月1日より、適格請求書発行事業者でない事業者からの仕入れについては、仕入税額控除を適用する事が出来なくなります。
ただし、インボイス制度導入後すぐに仕入税額控除の適用を認めなかった場合には、これまで免税事業者と多く取引をしている事業者にとっては非常に負担が大きくなることが想定されます。
そこで事業者に対する負担軽減措置として、経過措置が設けられています。
適用期間
仕入税額控除の経過措置は、インボイス制度が導入される2023年10月1日から6年間です。
具体的には、インボイス制度導入後、最初の3年間は免税事業者からの課税仕入について80%仕入税額控除が可能であり、その後3年間は50%仕入税額控除が認められ、これら経過措置期間の終了後は仕入税額控除の適用が認められないという流れになります。
下記の図をご参照ください。
適用対象者
この経過措置の適用対象者は、基本的に全ての事業者に適用されます。
その為、インボイス制度導入後の経過措置が適用される6年間は、仕入先が適格請求書発行事業者かどうかを確認する必要があります。
小規模事業者に対する負担軽減措置(2割特例)とは
負担軽減措置(2割特例)の内容
インボイス制度導入後、一定期間に限り、仕入控除税額の金額を売上に係る消費税額の2割を納税額とすることが出来る特例が設けられています。
適用期間
適用対象期間は、インボイス制度が導入される令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間になります。
3月決算法人の場合には、令和6年3月期から令和9年3月期における課税期間が2割特例の適用期間となります。
下記の図をご参照ください。
出典:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要
適用対象者
適用対象者はこれまで免税事業者でしたが、インボイス制度の導入を機に、適格請求書発行事業者として課税事業者になった人が対象となります。
適用対象外の具体例としては、適格請求書発行事業者の登録を受けていない事業者や基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者などが挙げられます。
2割特例の注意点
この特例を適用する為には、特に事前の届出などは不要です。
よって、消費税の申告書を作成する際に原則課税を適用している場合には、原則課税と2割特例のいずれか有利な方を選択すれば良いです。
注意すべき点としては、簡易課税を選択している場合には簡易課税と2割特例のいずれか有利な方を選択すれば良いのですが、簡易課税の場合には業種によって仕入控除税額が売上に係る消費税の何割かは決まっています。
そのため、第一種事業に該当する卸売業の場合には売上に係る消費税の1割を納税すれば良く、2割特例を卸売業が適用してしまうとかえって不利になってしまうので、その点については注意が必要です。
まとめ
インボイス制度が導入された場合、これまでと比べて事務負担や納税額は増加する事が想定されます。
そこで、今回ご紹介した仕入税額控除の経過措置や2割特例などを理解して、インボイス制度導入後に少しでも事務負担を軽減出来るよう本稿の記事が参考になれば幸いです。
詳細な内容が知りたい方は弊所へご相談下さい。