会計・税務

決算書の作成から納税までの流れ|何をいつまでにする?

決算が近づいてくると、1年間の収支を外部の利害関係者へ報告したり、納税額を確定する為に、決算処理を行う必要があります。

本稿では決算処理を行うにあたり、どういった流れでいつまでに何をしないといけないのかを解説していきます。

決算とは

決算とは、個人事業主の場合には1月から12月までの1年間、法人の場合には任意に決めた月を決算月として1年間の収入と経費を集計し、株主や取引先などの利害関係者へ財政状態と経営成績を報告する為に必要なことを言います。

決算は、利害関係者への報告だけでなく、納税額を確定させる為にも必要になります。

決算処理にあたり必要となる書類

決算処理を行い、納税額を算出する為には決算書の作成が必要になります。

ここでは決算書作成において、必要となる以下の書類について解説していきます。

  • 総勘定元帳
  • 財務諸表
  • 勘定科目内訳明細書
  • 事業概況説明書
  • 税務申告書

総勘定元帳

総勘定元帳とは、会社が日々の取引を行う上で発生する入出金などの処理を勘定科目ごとに分けて管理する書類になります。

決算処理を行うにあたり、総勘定元帳に記録された情報をもとに決算書を作成します。

よって、この総勘定元帳が正しく作成されていないと、正しい決算書の作成をすることができないので、重要な書類の一つとなります。

財務諸表

財務諸表とは、5つの計算書から構成されており、

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 附属明細表

を総称したものを言います。

この中でも特に重要視されるものが「財務三表」と呼ばれる貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書です。

貸借対照表

貸借対照表は会社設立時から現在までの期間において会社が所有している資産や負債など会社の財政状態を表示する書類になります。

次に紹介する損益計算書は会社の売上や利益などを表示しているため、会社の利害関係者はこちらを重視することが多いです。

しかし、会社の財政状態が健全か否か、すなわち、倒産する可能性がないかどうかを把握する為には、この貸借対照表の資産や負債、純資産から把握することになります。

損益計算書

損益計算書とは、前述した通り、会社の売上や経費、利益を表示している計算書であり、この書類から会社1年間の経営成績を把握することが出来ます。

キャッシュ・フロー計算書

キャッシュ・フロー計算書とは、お金の入出金を記載している計算書であり、営業活動、投資活動、財務活動の3つの活動に分けてそれぞれの活動からお金がプラスかマイナスかを把握することが出来ます。

なお、黒字倒産という言葉があるように、損益計算書では黒字になっていても、手元に現金がなく、運転資金がない場合には倒産してしまいます。

こういった事態を防ぐために、キャッシュ・フロー計算書を見て会社の現金の入出金を把握しておくことが重要となります。

勘定科目内訳明細書

勘定科目内訳明細書は、貸借対照表と損益計算書の科目の詳細な内訳を記載する書類になります。

貸借対照表に表示されている科目については、基本的に全ての科目を記載し、損益計算書に表示されている科目については、役員報酬や地代家賃など主要な科目について記載する必要があります。

事業概況説明書

事業概況説明書は、税務署が会社の従業員数や支店数、貸借対照表や損益計算書の主要な科目などの基本情報を一目で見て確認できる書類になります。

税務申告書

税務申告書は、法人であれば、法人税申告書、消費税申告書、地方税申告書が必要な書類であり、これらの書類から国へ納付すべき法人税、消費税、地方税の納税額を計算します

なお、個人事業主の場合には法人税申告書ではなく、所得税申告書になります。

決算書の作成から納税までの流れ

決算処理を行う理由としては、前述したように下記2点が挙げられます。

  1. 1年間の収支を会社の利害関係者へ報告すること
  2. 1年間の納めるべき税金を計算すること

これらの目的を達成するために、決算書の作成と納税を行います。

具体的な作業としての流れは次の通りになります。

1
期中の取引を会計処理へ入力

領収書・請求書などをもとに会計ソフトへ入力

2
決算時における決算整理仕訳の入力

決算時には決算整理仕訳を行う

3
貸借対照表や損益計算書の検証

残高や税務上の論点について検証

4
申告書一式の作成

税務申告書の作成

5
申告書一式の提出

国税と地方税の申告書を提出

6
確定納付税額の納付

期限までに納付

それぞれについて詳しく解説していきます。

期中の取引を会計処理へ入力

期中において売上や経費などが発生した場合、これらの計上根拠となる領収書・請求書などをもとに会計ソフトへ入力します。

決算時における決算整理仕訳の入力

そして、決算時には決算整理仕訳を行い、当期における棚卸資産、経過勘定項目、減価償却費、引当金などの計上を行います。

貸借対照表や損益計算書の検証

貸借対照表や損益計算書の最終金額について、残高や税務上の論点について検証します。

その後、試算表などで貸借対照表の全科目の残高が正しい金額になっているか、損益計算書の全科目の消費税区分のチェックや、税務上の論点となる役員報酬や消耗品費、交際費などの金額をチェックします。

申告書一式の作成

会計入力や残高確認の完了後、税務申告書の作成を行います。

税務申告書を作成する際に、上述した勘定科目内訳明細書や事業概況説明書を合わせて作成します。

なお、一般的に税務申告書などの書類作成は税理士に任せることが多いので、その場合には税理士が作成したことを証明する税務代理権限証書も税務申告書へ添付します。

申告書一式の提出

一般的に、法人を例として決算により作成した税務申告書は国税と地方税があります。

東京都23区内にある法人の場合、下記2ヶ所へ税務申告書を提出します。

  • 国税に関する税務申告書の提出先:法人の所在地を管轄する税務署になります。
  • 地方税に関する税務申告書の提出先:法人の所在地を管轄する都税事務所になります。

なお、東京都23区外や東京都以外の市区町村の場合には、都税事務所の他、県税事務所や市役所へも地方税申告書を提出する必要があります。

税務申告書の提出期限は、個人事業主と法人の場合で異なります。

なお、税金の納付期限も税務申告書の提出期限と同じになります。

  • 個人事業主の場合:1月から12月の期間の翌年3月15日
  • 法人の場合:決算月の2ヶ月以内(3月決算であれば、5月31日)

確定納付税額の納付

決算作業の結果、算出された確定納付税額は、上記税務申告書一式の提出と同時もしくは直後に下記へ納付する必要があります。

  • 管轄税務署
  • 管轄都税事務所、県税事務所
  • 管轄市区町村

納付先は1ヶ所だけではなく、法人の所在地が東京都23区外や東京都以外の県にある場合には3ヶ所へ納付する必要があるので注意が必要です。

納付期限は、上記税務申告書一式の提出期限と同じで、次の通りです。

  • 個人事業主の場合:翌年3月15日
  • 法人の場合:決算月の2ヶ月以内

なお、納付税額の納付方法についても次の通り選択することが可能です。

  1. 金融機関や税務署、都税事務所などの窓口で現金納付
  2. クレジットカード納付
  3. インターネットバンキング
  4. ダイレクト納付

決算書の作成から納税までの流れまとめ

決算書作成から納税までの流れを解説しました。

決算書を作成するにあたって、期中の会計処理は自社の経理担当者や社長自身が行い、税務申告書の作成は税理士へ依頼するというパターンが多いです。

ただし、経理処理に自信のない社長が自分で行うと決算書の残高が本来あるべき残高になっていなかったり、税務上の論点になる部分も一切考慮されていなかったりと、非常に税務リスクの高い決算書、税務申告書となっているものが散見されます

後々のトラブルを避ける為にも、会計や税務知識に不安があれば、是非、弊所へご相談下さい。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士