会計・税務

契約時に注意しなければいけない税金(印紙税)の取扱い

実務上、印紙を貼付するか否か、非常に悩ましいケースが多くあります。

印紙を判断するポイントは、契約書の名称に関わらず、その契約書に記載された内容に課税事項が記載されているかどうかを意識して判断する必要があります。

本記事では悩みがちな判断について詳しく解説します!

契約時において印紙が必要なケースとは

実務において、契約を結ぶ際に注意すべき税金として、印紙税が挙げられます。

契約書に印紙を貼付する場合、どういった契約書にいくらの印紙を貼付すべきか悩むことがあるかと思います。

今回は、印紙が必要になってくる契約書にはどういったものが挙げられるのか解説したいと思います。

印紙が必要になってくる契約書について

印紙の貼付が必要になる契約書を課税文書と言います。

この印紙が課税される文書とは、印紙税法別表第1の課税物件表に掲げる20種類の文書に課税されることとされており、この課税物件表に該当しない文書について、印紙税は課税されません。

また、課税物件表に該当しても印紙税が課税されないものとして、非課税文書というものがあります。

非課税文書の具体的なものとして、下記が該当します。

➀契約金額が少額なもの等(別表第一の課税物件表の非課税物件欄に記載)➁国、地方公共団体又は印紙税法別表第二に掲げる者が作成するもの➂日銀や独立行政法人など特定の者の作成する特定の文書及び国民健康保険法や厚生年金法などの特別法により非課税とされる文書(印紙税法別表第三の非課税文書の表に記載)

つまり、印紙税は「課税物件表」に該当し、「非課税文書」に該当しない文書(課税文書)に課税されることとなります。

印紙が必要になるかどうかの判断基準とは

契約書は、形式、内容ともに、作成者が自由に作成できるので、その内容には様々なものがあります。

契約書が課税文書に該当するかどうかの判断基準は、その文書の名称等によって決まるのではなく、下記のようなポイントを意識して判断します。

契約書に印紙が必要となるポイント
  1. 文書の内容として記載されている個々の事項の全てについて検討する。
  2. 文書に記載されている事項の中に、一つでも課税物件表に記載された課税事項に該当するものが含まれているか。

上記ポイントに意識して、両者を満たしていれば課税文書に該当します。

印紙を貼付するか否か判断するにあたり、文書の名称やその形式的な記載文言によることなく、その記載文言の実質的な意義に基づいて判断します。

実質的な意義とは、その文書に記載又は表示されている文言、符号などを考慮して、総合的に判断します。

例えば、売掛金の請求書に「了」、「済」などと表示してあり、その「了」、「済」の表示が売掛金を領収したということの当事者間で認識している場合、その文書は売上代金の受取書(第17号の1文書)に該当します。

印紙税を納める人ってどんな人?

印紙税を納める人とは、どのような場合に該当するのか、説明したいと思います。

印紙税の納税義務者は、課税文書を作成した時に成立し、納税義務者は課税文書の作成者となります。

課税文書の作成とは、課税文書となるべき用紙などに、課税事項を記載し、これをその文書の目的に従って行使することをいいます。

例えば、領収書等であれば交付の時、契約書等であれば契約当事者双方の署名押印が揃った時などが該当します。

印紙税の納付方法は、納税義務者は課されるべき印紙税相当額の収入印紙を課税文書に貼付することで印紙税を納付し、課税文書と貼り付けた印紙の彩紋に消印(割印)を押します。

実務上、頻繁に出てくる契約書について

最後に、実務上頻繁に使用される課税文書について、ご紹介致します。

印紙税法別表第1の課税物件表には20種類の文書が掲げられておりますが、実務上、最も重要性が高い課税文書は下記の通りです。

  1. 不動産の譲渡等の契約書(第1号文書)
  2. 請負に係る契約書(第2号文書)
  3. 継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)
  4. 金銭または有価証券の受取書(第17号文書)

①不動産の譲渡等の契約書(第1号文書)

こちらの課税文書は、下記4種類の契約書が該当します。

  • 不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書
  • 地上権または土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書
  • 消費貸借に関する契約書
  • 運送に関する契約書

印紙税は、契約書に記載された契約金額に応じて200円から60万円の印紙税が課税されます。

なお、契約金額が1万円未満である場合には、非課税となります。

②請負に関する契約書(第2号文書)

工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、映画俳優専属契約書、請負金額変更契約書などが挙げられます。

請負とは、民法632条に規定する「請負」のことをいい、当事者の一方がある仕事の完成を約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することを内容とする契約です。

また、完成すべき仕事の結果は有形、無形は問いません。

印紙税は、契約書に記載された契約金額に応じて200円から60万円の印紙税が課税されます。

なお、契約金額が1万円未満である場合には非課税となります。

③継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)

売買取引基本契約書、特約店契約書、代理店契約書、業務委託契約書、銀行取引約定書などが挙げられます。

印紙税は、契約書一通につき4,000円の印紙税が課税されます。

なお、契約期間が3か月以内で、かつ、更新の定めのないものは除きます。

④金銭または有価証券の受取書(第17号文書)

商品販売代金の受取書、不動産の賃貸料の受取書、請負代金の受取書、広告料の受取書などが挙げられます。

印紙税は、契約書に記載された契約金額に応じて200円から20万円の印紙税が課税されます。

なお、営業に関しないもの、有価証券・預貯金証書など特定の文書に追記したものである場合には非課税となります。

まとめ

今回は契約時において注意すべき税金として、印紙税を紹介しました。

実務上、印紙を貼付するか否か、非常に悩ましいケースが多くあります。

印紙を判断するポイントは、契約書の名称に関わらず、その契約書に記載された内容に課税事項が記載されているかどうかを意識して判断する必要があります。

印紙の貼付について悩まれる際には、弊社までお気軽にご相談頂ければと思います。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士