労務

リモートワーク中のけがは労災認定される?10事例でポイントを解説

従業員がオフィス外で業務を行う形態のことをリモートワーク・テレワークといいます。

DX化・効率の推進やコロナ禍による外出禁止、オフィス賃料や通勤費の合理化のため今やリモートワークは当たり前の時代になっています。

リモートワーク中に従業員がケガをした場合、労災保険は適用されるのでしょうか。

リモートワークであっても会社には従業員に対する安全配慮義務があり、業務中のけがは労災として認められます。

本記事では、リモートワーク中の労災が認められるポイントについて具体的な10個の事例について解説します。

労災保険とは?

労災保険は、労働者が業務中や通勤途中に起きた事故や疾病に対する保険制度です。

リモートワーク中においても業務遂行上のけが・病気については労災保険が適用されます。

リモートワーク中の労災保険適用条件

労災保険の適用条件の基本

労災保険が適用されるためには

  1. 業務遂行性
  2. 業務起因性

が確認される必要があります。

労災保険適用条件①業務遂行性

業務遂行性とは、「けがをした労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態」のこと。

リモートワーク中でも、労働契約に基づき、労働時間内に指示通りの業務を遂行している場合には業務遂行性が認められます。

労災保険適用条件②業務起因性

業務起因性とは、「負傷や疾病が業務に起因して生じたものであること」を指します。

業務起因性があるかについては、

  • 業務の危険性
  • 通常起こりうるものであるか

などにより個別具体的に判断されます。

10事例で解説!リモートワーク中のこんなけがは労災認定される?

事例①会社へ資料を取りに行く際に転倒した

認定の可能性高い
ポイント

仕事に必要な資料を取りに行くことは業務上の行為にあたるため、労災認定される可能性が高いです。資料を郵送するためにポストや郵便局に行った際のけがなども同様です。

事例②在宅勤務中にシュレッダーで指を切った

認定の可能性高い
ポイント

業務上の機密書類をシュレッダーにかけることは業務上の行為にあたるため、労災認定される可能性が高いです。

事例③カフェで仕事をしていてけがをした

認定の可能性あり
ポイント

カフェで仕事をする場合も労災認定される可能性はあります。ただし「在宅勤務の場所は自宅のみ」と会社で規定されている場合、指揮命令下に置かれていたことを証明しづらくなります。

事例④仕事中に子どもが投げたおもちゃが当たってけがをした

認定の可能性あり
ポイント

在宅勤務の場合は子どもと同じ空間で仕事をする可能性は十分に考えられるため、労災認定される可能性はあります。

事例⑤ランチに外出中にケガをした

認定の可能性なし
ポイント

出社時と同様、休憩中に職場を離れて昼食をとる場合は事業主の支配下に当たらないため、労災認定される可能性は低いです。

事例⑥家事や子供の世話によるけが

認定の可能性なし
ポイント

子どもの世話や家事をしている際は業務遂行性が認められず業務起因性もないため、労災とは認められません。

事例⑦深夜・休日の残業中のけが

認定の可能性あり
ポイント

申請していない深夜・休日残業中のけがの場合、業務遂行性が認められない可能性もあります。

事例⑧仕事中にトイレに行く途中で転倒した

認定の可能性高い
ポイント

出社時と同様、トイレのための離席中のけがは労災として認められます。厚労省が公表している「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」においてもリモートワークで労災が認定されたケースとして挙げられています。

事例⑨椅子に座る時間が長くなり腰痛が発生した

認定の可能性あり
ポイント

出社時と同様、厚生労働省「腰痛の労災認定」基準を満たしている場合、労災認定が受けられます。

事例⑩リモートワークのストレスによりメンタル不調に陥った

認定の可能性あり
ポイント

出社時と同様、仕事による「精神障害の労災認定」基準を満たしている場合、労災認定が受けられます。

事例からみるリモートワーク中の労災認定におけるポイント

①業務時間と私的時間の区別ができているか

リモートワーク中でも業務時間と私的時間を明確に区別し、事故やけがの発生時刻を正確に把握することが重要です。

リモートワーク中に掃除・洗濯や保育園の送り迎えなどで中抜けする場合は「いつ仕事を中断し、いつ仕事に戻ったか」を正確に記録しておく必要があります。

②勤務場所の特定とルール設定ができているか

事故やけがが起きた場所が業務場所と認定されるためには、勤務場所を明確に指定し、安全性を確保するためのルール設定が必要です。

カフェやコワーキングスペースでの仕事を認める場合は、あらかじめ会社として規定しておく必要があります。

③業務内容の記録と報告

業務遂行性が認められるためには日々の業務内容の記録が重要です。

  • PCのログイン記録
  • メールの送受信記録
  • 業務日報

など、業務の内容や進捗を適切に記録することで労災認定がスムーズになります。

④会社との連絡や情報共有

リモートワーク中でも会社との連絡や情報共有を適宜行い、必要な際に適切な指示やサポートを受ける体制を整えましょう

まとめ

リモートワーク中のけがも、労災認定の要件を満たせば労災と認められます。

しかし出社時に比べて業務遂行性・業務起因性の証明が難しくなります。

上記のポイントを踏まえ、リモートワーク中も労務管理を確実に行いましょう。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士