労務

社会保険の扶養加入条件と必要な手続き・よくある質問について徹底解説

社会保険では、一定の要件を満たす被保険者の家族についても病気・けが・死亡・出産についての保険給付・年金給付が行われます

その給付の対象となるのが被扶養者で、被扶養者は社会保険料の免除を受けながら給付を受けることができます。

なお、扶養は一般的に2種類あって、社会保険の扶養と、所得控除を受けることのできる所得税上の扶養があります。

本記事では、社会保険上の扶養について

  • 加入条件
  • 加入するための手続き
  • よくある質問

をまとめています。

被扶養者の加入条件

社会保険上の扶養に入る条件は大きく分けて以下のふたつです。

  1. 被保険者との続柄
  2. 収入の要件

条件①被保険者との続柄

社会保険上の被扶養者として認められる範囲は、

  • 被保険者とその配偶者の第3親等まで
  • 事実婚などにより同一生計の事実がある人(内縁関係の人)

画像引用;全国健康保険協会より

続柄により、被保険者との同居が必要か不要かが異なります。

同居の必要なし
(別居でも可)
・被保険者の直系尊属(父・母)
・配偶者(内縁関係・事実婚を含む)
・子
・孫
・兄弟姉妹 
同居が必要上記以外で
・第3親等に含まれている親族
・被保険者と内縁関係にある配偶者の父母および子 
(配偶者が亡くなった後にも継続して同居する場合を含む)

例えば、甥・姪や伯父母も同居していれば扶養親族として認められます。

また、75歳以上の高齢者は「後期高齢者医療制度」の被保険者となるため、社会保険の扶養対象とはなりません

条件②収入の基準

被扶養者として認定されるには、被保険者との続柄に加え、「主として被保険者の収入により生計を維持されていること」が必要です。

同居・別居の場合それぞれ①・②の両方を満たす場合に扶養の認定がされます

同居の場合①認定対象者の年間収入が130万円未満※
②被保険者の年間収入の2分の1未満
別居の場合①認定対象者の年間収入が130万円未満※
②被保険者からの援助(仕送り)による収入額より少ない

※認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満

ここでの「年間収入」は認定日までの収入については問わず、認定日以降の年間収入の見込額で考えます。

また、年間収入130万円を月額に直すと108,333円となり、月収見込額が108,333円を超えるか否かが収入の判断基準として用いられることが多いです。

例えば、「これまで正社員として働いていた妻が退職し、今後は月8万円のパート勤務をする」という場合、将来的に収入の基準を満たすことになるため扶養に入ることが可能です。

「年間収入」に含まれる収入は?

年間収入に含まれる「収入」とは、一時的な収入を除き継続的に得られる収入を指します。

「年間収入」に含まれる収入具体例
給与収入給与・賞与
年金収入老齢年金・障害年金・遺族年金労災年金・個人年金
事業収入個人事業・農業
不動産収入土地や建物の賃貸収入
利子・投資収入預貯金や有価証券の利子・株式配当
給付金など分割で受け取る退職金育児休業給付金
出産手当金・失業手当・傷病手当金

・「年間収入」に含まれない収入は?

上記以外の一時的な収入は年間収入には含まれません。

例)

  • 一度きりの不動産売買収入
  • 生命保険解約一時金
  • 一括で受け取る退職金
  • 再就職手当(一時金)
  • 出産育児一時金

社会保険の扶養に入るために必要な手続き

扶養の加入に必要な書類

扶養に加入するには、事業主が「被扶養者(異動)届」を提出します

その際、状況に応じて以下の添付書類が必要です。

対象添付書類省略可能な場合
全員続柄が確認できる書類・被扶養者の戸籍抄本
・戸籍謄本
・住民票の写し など
被扶養者(異動)届に
被保険者・被扶養者両方の
マイナンバーの記載があり、
事業主が続柄を確認した場合
全員収入が確認できる書類・課税証明書
・直近の確定申告書
・離職票 などの写し
・16歳未満の場合
・事業主の証明がある場合
別居の場合仕送り額が確認できる書類・現金書留の写し
・預金通帳の写し
・振込証明書
・学生の場合
・16歳未満の場合
内縁関係の場合内縁関係を確認できる書類・内縁関係双方の戸籍謄本
・世帯全員の住民票

複雑な状況の場合は扶養認定の審査において年金事務所から追加の書類を求められる可能性もあります。

扶養の加入手続きの時期と提出先

被扶養者になる事実が発生した日から5日以内に手続きを行いましょう。

「被扶養者(異動)届」と必要な添付書類を管轄の年金事務所または事務センターに提出します。 

提出方法は以下の3種類です。

  • 電子申請
  • 窓口への持参
  • 郵送

社会保険の扶養加入についてのQ&A

Q1 夫が失業した場合、妻の扶養に入ることができる?

夫が失業した場合は、妻の扶養に入ることができます。

ただし失業手当の受給期間中は、受給金額により扶養から外れる(=国民年金・国民健康保険に加入する)必要があります。

扶養に加入するための収入の要件は年間130万円のため、日額にすると3,612円。

失業手当の賃金日額が3,612円以上の場合には扶養から外れることとなります

具体的な流れは以下の通りです。

  1. 失業手当の待機期間中は妻の扶養に加入
  2. 受給期間中は扶養から外れる
  3. 失業手当受給後に条件を満たしていれば再度妻の扶養に加入
  4. 再就職し、年間収入130万円以上の見込みがあれば扶養から外れ自身の会社で社会保険に加入

Q2 共働きの場合、子どもはどちらの扶養に入る?

子どもは原則として、収入が高いほうの扶養に入ります

ただし現在は一時的に妻のほうが収入が高いが、恒常的には夫のほうが収入が高い場合は夫の扶養に入る、など状況に応じて選択することは可能です。

Q3 海外に住んでいる家族を扶養に入れることができる?

原則として、扶養に加入することができるのは日本国内に住民票のある人のみです。

単身で来日して働いている人が、自国に残った家族を扶養に入れることはできません。

ただし、

  • 留学中の子ども
  • 被保険者の海外赴任に同行する家族

など、例外として扶養に加入することができる場合もあります。

Q4 フリーランスの妻が妊娠により収入減少した場合、夫の扶養に入れる?

フリーランスの妻が妊娠により収入減少した場合も夫の扶養に入れます。

会社員の場合と違い扶養に加入する明確な時期を判断するのが難しいですが、仕事をセーブし、将来にわたって年間収入130万円未満になる見込みとなったタイミングで扶養に加入することができます。

まとめ

本記事では扶養の加入条件についてまとめました。

扶養に加入できるか判断が難しい場合はお気軽にご相談ください。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士