インボイス制度

インボイス制度が不動産賃貸業に与える影響について税理士が徹底解説!

令和5年10月よりインボイス制度が導入されて半年ほど経過しました。

このインボイス制度は、これまでの消費税の仕組みを大きく変える制度であり、適格請求書を発行しなければ、仕入税額控除を適用する事が出来ないというものになります。

この適格請求書を発行する為には、適格請求書発行事業者へ登録を行なう必要があります。

不動産賃貸業を行う事業者の場合、この適格請求書発行事業者へ登録すべきかどうかにスポットを当てて解説していきたいと思います。

そもそもインボイス制度とはどういった制度?

インボイス制度とは、これまでの区分記載請求書から適格請求書をもとに取引を行う必要がある、消費税における新しい制度になります。

ここではインボイス制度の基本的な事を紹介し、詳細な内容は下記記事を参考にして頂ければ幸いです。

インボイス制度が導入された事により、仕入税額控除の適用を受ける為には適格請求書を保存する必要があります。

適格請求書とは、これまでの区分記載請求書に「適格請求書発行事業者の登録番号」、「税率ごとに区分した消費税額や当該金額」などを追加で記載された請求書やレシート、領収書などの書類をいいます。

この適格請求書が発行されない場合には、支払いを行った事業者は仕入税額控除を適用する事が出来ず、消費税の納税額を計算する上で不利になってしまいます。

仕入税額控除とは、消費税の納税額は売上に対する消費税額から仕入に対する消費税額を差し引いた金額になりますが、仕入税額控除が適用されない場合、この仕入に対する消費税額を差し引く事が出来なくなります。

インボイス制度が導入された令和5年10月より令和11年9月までは、インボイス制度における経過措置として、適格請求書の保存がない場合でも最初の3年間は仕入控除税額の80%、その後の3年間は仕入控除税額の50%が、仕入税額控除の適用を受ける事が認められております。

よって、令和11年10月から適格請求書が無いと仕入税額控除の適用を受けることが出来ません。

不動産賃貸業はインボイス制度によってどういった影響を受けるのか?

住宅や土地を貸している不動産賃貸業の場合、インボイス制度による影響を受けない?

インボイス制度が不動産賃貸業に与える影響について、結論から申し上げますと、住宅や土地を貸している場合にはインボイス制度の影響を受ける事はありません。

その理由として、住宅や土地の場合、そもそも消費税は非課税とされている事から、借り手側ではインボイス制度の影響を受けることなく仕入税額控除の適用を受けておりません。

したがって、適格請求書を発行しても借り手側は仕入税額控除の適用を受けられません。

よって、住宅や土地を貸している不動産賃貸業の場合にはインボイス制度における適格請求書発行事業者へ登録する必要はありません。

事務所や店舗を貸している不動産賃貸業の場合、インボイス制度による影響を受ける可能性について

事務所や店舗を貸している不動産賃貸業の場合には、インボイス制度の影響を受ける可能性があります。

事務所や店舗を借りている事業者がそもそも消費税を納める義務がない免税事業者であれば、貸し手側は適格請求書発行事業者に登録する必要はありません。

しかし、借り手側が消費税の課税事業者である場合には、事務所や店舗の家賃についても仕入税額控除の適用を受けることが可能です。

したがって、インボイスの発行を貸し手側へ求める事になります。

その場合には貸し手側でもインボイスを発行出来る適格請求書発行事業者へ登録する必要があります。

不動産賃貸業は適格請求書発行事業者に登録すべきかどうか?

上述した通り、不動産賃貸業でも取り扱う物件の種類によってインボイス制度における適格請求書発行事業者へ登録すべきかどうか異なります。

住宅や土地の場合には、そもそも消費税は非課税とされるものである為、適格請求書発行事業者に登録する必要はありません。

一方で、事務所や店舗の場合には、借り手側が消費税課税事業者であれば仕入税額控除の適用を受けている事から、貸し手側ではインボイスを発行出来る適格請求書発行事業者へ登録すべきです。

インボイス制度による不動産賃貸業の注意点とは

新規の契約を獲得するのが難しくなる

不動産賃貸業を行う場合、住宅や土地などであれば消費税はそもそも非課税である為、適格請求書発行事業者へ登録する必要がない事は上述した通りです。

しかし、事務所や店舗を賃貸する場合、借り手が課税事業者である場合には仕入税額控除の適用を受ける為にインボイスの発行が求められます。

貸し手が適格請求書発行事業者へ登録していない場合、借り手側は適格請求書発行事業者へ登録している貸し手から物件を借りる事も考えられるので、適格請求書発行事業者に登録をしていない貸し手は新規契約を獲得する事が難しくなる場合が考えられるので注意が必要です。

家賃収入が減少する可能性がある

免税事業者である不動産賃貸業がインボイス制度に対応する為、適格請求書発行事業者へ登録した場合、消費税の納税義務が発生します。

上述した新規契約を獲得する為に適格請求書発行事業者へ登録をした場合、消費税の納税をする必要があるので収入の減少に繋がる事を認識しておく必要があります。

法人成りをした場合でも消費税の節税策にはならない

従来であれば、2年前(基準期間)の売上高が1,000万円以下の場合、消費税の納税義務が発生しない免税事業者に該当しておりました。

その為、法人成りをすることによって、個人事業主であれば生じる2年前の売上高を無いものとして消費税の節税効果を得る事が出来ていました。

しかし、インボイス制度が導入されることによって、適格請求書発行事業者へ登録している場合には、2年前の売上高を考慮する事なく、消費税の納税義務が生じる課税事業者に該当します。

よって、法人成りによる消費税の節税効果を得ることが出来なくなりました。

まとめ

住宅や土地を貸している不動産賃貸業の場合、そもそも消費税が発生していないので、適格請求書を発行する必要がない為、これまで免税事業者であればインボイス制度による影響は受けないので、従来通りで問題ありません。

ただし、上述したように事務所や店舗などを貸している場合には借り手側から適格請求書の発行を求められる可能性がある為、インボイス制度による影響を受ける可能性は十分に考えられます。

適格請求書発行事業者へ登録した場合、事務負担や消費税の納税義務など様々な手続きが必要になるので、登録すべきか悩んでいる方は、是非弊社へご相談頂けますと幸いです。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士