会計・税務

法定調書とは?種類と記入内容・注意点を解説

年末に近づいてくるにあたり、年末調整を終えた後に行わなければならない業務として、法定調書の作成があります。

年末調整については、こちらの記事をご参考にして頂けますと幸いです。

法定調書の作成・提出を行わない場合や虚偽記載がある場合には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられますので注意が必要です。

今回は法定調書とは何か、その種類や注意点について解説していきます。

法定調書とは

会社経営を行なっていると、給料や退職金、外注費、支払家賃など様々な支払いがあります。

法定調書とは、所得税法や相続税法、租税特別措置法などの法律によって、これらの支払いが、1月1日から12月31日の1年間でどのくらい発生しているかについて、税務署へ報告・提出が義務付けられている書類をいいます。

法定調書とは、さまざまな支払いに対するものがあり、現在では60種類あります。

法定調書の提出は、毎年1月31日までを期限として管轄の税務署へ提出が必要です

法定調書の目的

法定調書を作成する目的は脱税を防ぐことです。

会社が個人事業主へ報酬を支払った場合、報酬金額と併せて支払調書を作成します。

この支払調書も60種類の法定調書のうちの1つです。

個人事業主は確定申告の際に、この支払調書をもとに確定申告を行いますが、支払調書に記載された金額と、個人事業主が確定申告した金額が一致していれば正しく申告・納税を実施していると把握出来ます。

しかし、支払調書の金額と確定申告した金額とに不一致があれば、正しく確定申告しておらず、税務署からのお尋ねや税務調査により、その不一致である原因を追求することになります。

よって法定調書の目的は、脱税を把握する為になります。

法定調書の種類

主な法定調書

法定調書は上述した通り1月31日までに提出する必要があります。

各法律でさまざまな法定調書がありますが、主な法定調書は所得税法に規定されている次の6種類です。

  1. 給与所得の源泉徴収票
  2. 退職所得の源泉徴収票
  3. 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
  4. 不動産の使用料等の支払調書
  5. 不動産等の譲受けの対価の支払調書
  6. 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

これらの法定調書についての内容や注意点は、次の表の通りになります。

法定調書の種類書類の内容報告上の注意点
①給与所得の源泉徴収票役員・従業員への報酬や給与支払を報告する書類です。・役員か平社員であるかどうか
・年末調整を受けているかどうか
などによって税務署へ提出するかどうか判定します。
②退職所得の源泉徴収票退職金の支給を報告する書類です。・給与所得同様に一定金額を超えている場合、税務署への提出が必要となります。
・死亡により退職金を支給した場合には、相続税法における退職所得の源泉徴収票に該当する為、注意が必要です。
③報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書個人への外注費や士業などへの支払報酬を報告する書類です。・年間の支払金額が5万円を超えている場合に提出が必要です。
・外注費については、所得税法に規定されていない報酬の場合、作成は不要になります。
④不動産の使用料等の支払調書事務所や駐車場などの不動産に関する家賃支払いを報告する書類です。年間の支払金額が15万円を超えている場合には提出が必要です。
⑤不動産等の譲受けの対価の支払調書店舗や土地などを購入した場合の支払を報告する書類です。年間の支払金額が100万円を越えている場合に提出が必要です。
⑥不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書不動産の購入や貸付けによるあっせん手数料の支払を報告する書類です。年間の支払金額が15万円を超えた場合に提出が必要です。

法定調書合計表とは

法定調書合計表とは、上述した6種類の法定調書をまとめたものを言います。

6種類の法定調書に添えて当該合計表を作成する必要があり、6種類ごとに、支払先や支払金額、源泉所得税などの総額を記載し、さらに税務署へ提出する法定調書の人数と支払金額を記載する必要があります。

法定調書作成の注意点

未払額を記載する

報酬などの支払調書を作成するにあたり、1月から12月までの期間において支払った金額を記載する必要があります。

上記期間において未払額がある場合には当該金額についても支払調書へ記載する必要があるので注意が必要です。

消費税額を含めて記載する

報酬などの源泉徴収を行う場合、支払うべき報酬の税抜金額と消費税額を別途記載している場合には、税抜金額に対して源泉徴収を行なう事が認められています。

しかし、支払調書に記載する際には、消費税額を含めた税込金額で記載する必要があります。

マイナンバーを記載する

2016年度より支払調書にマイナンバーを記載する事が必須となりました。

その為、支払先へマイナンバーの提供を求める必要がありますが、拒否される可能性もあります。

その場合にはマイナンバーの提供はしたが拒否されたという事を記載しておく事が重要になります。

まとめ

今回は法定調書について解説しました。

法定調書とは60種類のものがあり、規定している法律もさまざまです。

年末に近づくと年末調整だけでなく、法定調書の作成も行う必要があるので、年間で支払った給料や報酬、不動産関係の支払いがある場合には準備をしておく必要があります。

年末における業務として、年末調整、法定調書の他に、償却資産税申告書の作成も挙げられます。

次回は償却資産税についてご紹介致します。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士