会計・税務

法人成りにより個人が所有していた資産を引き継ぐことはできるの?法人側の視点より徹底解説!

個人事業主が、売上高や従業員の増加など事業規模の拡大により、節税対策として法人成りをするケースが挙げられます。

法人成りをした場合、これまで個人事業主が事業で使用していた資産を新たに法人として引き継ぐ事は出来るのでしょうか。

今回はこの資産を引き継ぐ事が出来るのかどうかにスポットを当てて解説していきたいと思います。

資産を引き継ぐ為の4つの方法とは?

法人成りにより、個人からの資産を引き継ぐ事は可能です。

ただし、資産を引き継ぐ為には、次の4つの処理が必要になります。

  1. 譲渡
  2. 賃貸
  3. 現物出資
  4. 贈与

これらの処理を行うことによって法人へ資産を引き継ぐ事が出来るので、以下解説していきます。

資産を引き継ぐ為に譲渡した場合

法人成りをした場合に、個人事業主で使用していた建物や車両、パソコンなどの資産を引き継ぐ際に行われる方法として、譲渡が挙げられます。

譲渡は、個人事業主が法人へ資産を売却する事を言います。

この場合、法人側の処理としては個人事業主から譲り受けた資産を計上する必要があります。

なお、個人事業主側では、譲渡所得として確定申告を行う必要があります。

また、消費税の取り扱いとして、法人側では設立してから2年間は免税事業者となる為、消費税の仕入税額控除の適用を受けることが出来ません。

個人事業主側では課税取引となるので消費税が課税される点は注意が必要です。

なお、金額については、自由に決めることが出来るが適正な価格に設定しないと寄附金課税されてしまう可能性があります。

一般的には帳簿価額で譲渡が行なわれる事が多いですが、不動産等の場合に時価と簿価の金額が大きく乖離している場合には簿価での譲渡だと寄附金課税などが課されることもある為、注意が必要になります。

資産を引き継ぐ為に賃貸した場合

個人事業主が使用していた資産を、法人へ引き継ぐ主な方法として、資産を法人へ賃貸する場合が挙げられます。

上述した「譲渡した場合」には、売却時に不動産の移転登記や税理士や司法書士への相談など、手間や費用が発生してきます。

賃貸する場合には、個人と法人間で不動産の賃貸借契約書を締結し、法人は賃貸借契約書通りの賃料を支払う事で完結します。

譲渡する方法、賃貸する方法の2つが、個人と法人間で資産を引き継ぐにあたり最も多く行われている一般的な方法になります。

資産を引き継ぐ為に現物出資をした場合

個人から法人へ資産を引き継ぐ方法として、現物出資も考えられます。

現物出資とは、所有している資産を法人設立時において、資本金として資産を移転させる方法になります。

資金はないが資本金を増加させたい場合、個人で所有している不動産を現物出資に活用する事で、現金を出資しなくても、不動産の金額がそのまま資本金として増加させる事が可能になります。

ただし、現物出資を活用する場合には、現物出資できる資産が不動産や債券など限定されている事や、裁判所が選任した検査役の調査を受ける必要があるなど、いくつか手間がかかる為、一般的にはあまり活用されていません。

資産を引き継ぐ為に贈与をした場合

個人から法人へ資産を引き継ぐ方法として、上記の他に、贈与が挙げられます。

贈与とは所有していた資産を、他人へ無償で譲渡することを言います。

例えば、個人事業主が所有していた車両を、法人へ無償で譲り渡す事が考えられます。

贈与の場合、資産を譲り受けた法人側では購入資金が発生する事がない為、資金が不足していても法人へ資産を移せる事がメリットとして挙げられます。

贈与を行うにあたり注意すべき点は、実際には現金の動きはないですが、時価により譲渡したものとみなす為、個人事業主側では確定申告で譲渡所得の申告が必要になります。

一方で、法人側では時価で資産を譲り受けた事になる為、受贈益を計上する必要があります。

贈与についても、個人事業主の資産を法人へ引き継がせる方法としてあまり行われることはありません。

引き継ぐ事が出来ない資産は何があるの?

個人事業主から法人成りをした場合、個人事業主がこれまで所有していた資産を法人へ引き継ぐ場合に、そのままでは引き継げない資産があります。

具体的なものとしては下記内容のものが挙げられます。

契約者が個人事業主になっているもの

個人事業主が契約者となっている賃貸物件やリース資産などは、法人へそのまま引き継ぐことが出来ません。

不動産などは、個人しか契約できない物件もあるので、法人へ引き継がせる為には、契約者を個人から法人へ変更する必要があります。

営業許可が個人事業主になっているもの

営業許可が、個人事業主になっている店舗などをそのまま法人へ引き継ぐ事は出来ません。

こういった場合にも上記同様に、法人へ引き継がせる為には、個人事業主から法人へ許可申請を行っておく必要があります。

まとめ

近年ではITの進展により、個人の方でも容易に法人設立をすることが出来るようになりました。

従来、法人設立を行う為に、法務局などへ自ら伺い登記を行う必要がありましたが、最近では法人設立システムを利用する事により、自宅で簡単に法人設立をすることが可能です。

個人事業主がこれまで使用していた資産を法人へ引き継ぐ場合、引き継ぐ方法だけでなく、どういった資産を引き継ぐのかによっては、契約者の変更手続きなども必要になります。

現在法人成りを考えている人にとって、本稿が参考になれば幸いです。

ご不明点がございましたら、是非弊所までご相談下さい。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士