会計・税務

起業に失敗しないためにやっておくべき5つの事項と注意点

これまで、法人成りや法人の種類についてご紹介してきましたが、今回は実際に起業するにあたって知っておくべき必要事項や注意点について解説していきたいと思います。

最近では働き方改革や新型コロナウイルスが流行したことを契機に、時短勤務やリモートワークなど、自由な働き方が普及してきました。

こうした背景から、これまで組織に雇われていたサラリーマンなどの会社員が、個人事業主や法人設立など、起業する人が増加しています。

今回は、自分で起業するにあたって知っておくべき必要事項や注意点について、解説していきたいと思います。

起業するにあたりやっておくべき5つの必要事項

起業するにあたり最低限知っておくべき必要事項を税理士兼社労士の視点からご紹介いたします。

①目標を決定する

事業活動を進めていくうえで、目標を明確にしておくことは非常に大切です。

起業した場合、雇用されていた時とは異なり、ただ仕事をこなすだけでは事業が上手くいくことはあり得ません。

自分から営業活動を行い、仕事を獲得していく必要があります。

そのため、明確な目標が無いと、ただ仕事をこなしていくだけになってしまい、事業規模の拡大もできず、何のために起業しているのか分からなくなってしまうおそれがあります

将来に向けたビジョン・ミッションを掲げる事が事業成長の道しるべになるので、起業時には目標を決めることが重要です。

②税金について理解する

起業するにあたり、

  • 個人事業主
  • 法人

いずれを選択するかによって支払う税金の種類が異なります。

個人事業主の場合、納付する税金は所得税です。

所得税が発生するかは、儲けが出ているか否かによって異なります。

儲けが出ていれば納めるべき所得税は発生しますが、出ていなければ所得税を納める必要はありません

また所得税率は、累進課税といって儲けが増えれば増えるほど税率が高く、最大で55%(住民税も含む)になる仕組みになっています。

一方で法人税率は資本金額によって異なりますが、資本金1億円以下である法人の場合、年間800万円までの儲けに対しては実効税率が約23%であり、それを超えた儲けに対しては実効税率が約33%であり、法人税の場合には比例税率という仕組みになっています。(※東京都の場合)

また、法人の場合には利益が出ているか否かに関わらず、必ず納税が発生する法人住民税均等割というものがあります

以上のことから、所得が小さいうちは個人事業主として起業した方が納める税金は少なくする事ができます。

ただし、所得規模が大きくなればなるほど納める所得税は累進課税によって増加する為、そのような場合には法人成りをして起業した方が、税金面では有利に働きます

起業した際には最低限、上記内容を理解しておく必要があります。

③社会保険制度を理解する

社会保険は

  • 健康保険、国民健康保険(病気などで通院などに備える為の保険)
  • 介護保険(介護が必要となる人を支える為の保険)
  • 厚生年金、国民年金(高齢化や障害などによる補償を支える為の保険)
  • 労働保険(労働災害や失業した場合に備える為の保険)

を総称したものです。

起業した際には、「健康保険、国民健康保険」と「厚生年金、国民年金」について変更手続きが必要になりますので、社会保険についても理解しておく必要があります。

④事業計画書を準備する

起業時において、金融機関や投資家から融資を受ける事も多く考えられます。

その為、金融機関や投資家などの利害関係者へ事業内容などを説明出来る事業計画書を準備しておくことが重要です。

事業計画書の記載内容としては、一般的に下記事項が挙げられます。

  • 経営者プロフィール
  • 事業内容
  • 将来の収支計画
  • 事業戦略・組織設計

具体的には上記内容の他にもいくつかありますが、融資を受けるにあたって事業計画書が必要であることを理解しておく必要があります。

⑤起業にあたって必要な法的手続きを理解する

起業する際、法人設立をする場合には税務関係・労務関係の設立届や法務局への登記や定款認証などを行う必要があります。

本業に集中する為、これらの手続きを下記の専門家へ任せるのは良い事ですが、自分自身もこれから経営者として事業活動をしていく上ではこれらの内容も最低限の知識として理解しておく必要があります。

  • 税務関係⇒税理士
  • 労務関係⇒社会保険労務士
  • 登記・定款認証⇒司法書士

起業時における契約の注意点

起業時における注意点としては、「取引先と契約書を交わす事」が考えられます。

会社員であれば雇われていた立場である為、契約などについてはあまり意識してこなかったと思いますが、起業した場合には契約書は避けては通れません。

この契約書は起業した自分自身を守る為にも非常に重要なので、この点についても理解しておく必要があります。

起業直後に交わすことが多い4つの契約書

起業直後に交わす事が多い契約書としては、以下が考えられます。

  • 融資を受けるとき⇒金銭消費貸借契約書
  • 業務委託を依頼する又は受けるとき⇒業務委託契約書
  • 賃貸物件を借りるとき⇒賃貸借契約書
  • リース契約組むとき⇒リース契約書


契約書で大切なことは、何を約束したかを把握しておくことになります。

契約書作成にあたって最低限必要な7項目

契約書作成にあたって、最低限必要な事項は次の7点です。

  1. 作業内容
    (どういった業務を行うのか)
  2. 契約期間
    (業務を行う期間はいつからいつまでなのか)
  3. 契約金額
    (報酬額はいくらなのか)
  4. 報酬の支払手段と支払期日
    (報酬はどのように支払うのか)
  5. 契約通りに履行しなかった場合の顛末
    (ペナルティなどはあるのか)
  6. 契約破棄の方法
    (解約方法はどのようにするのか)
  7. 契約期間終了後の取り扱い
    (自動契約なのか、契約終了なのか)

まとめ

組織に雇われていた会社員に比べて、起業した場合には自由な働き方が出来る一方で、全ての責任は自分で負うことになるというリスクが発生します。

近年の働き改革などの影響によって起業する人は増えてきていますが、日々の業務を通じて、税金や社会保険などの最低限必要な知識が無いまま起業している人が非常に多い印象を受けます。

これから起業することを考えている人は、本稿を参考にご不明な点がございましたら是非弊所へご相談頂けますと幸いです。

Conduct

植西 祐介
税務会計事務所・社会保険労務士事務所コンダクト 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士